第236話 相棒から恋人へ
「さて終わったな」
シルヴィスはディアンリアが消滅したのを確認したところでヴェルティアに視線を向けた。
「ヴェルティア、話がある」
「は、はい!!」
「ここでは何だから場所を変えるぞ」
「は、はい」
ヴシルヴィスの言葉にヴェルティアが恥ずかしそうに頷いた。
「ディアーネさん、ユリさん、二人とも少しばかりヴェルティアと話があります。よろしいですか?」
「もちろんです!!」
「私も反対する理由はないよ」
「ありがとうございます。それではちょっと行ってきます」
シルヴィスはディアーネとユリにそういうとヴェルティアの手を取った。即座に転移魔術を起動すると二人の姿が消えた。
「あれ?ここは?」
ヴェルティアが周囲を見渡すと首を傾げた。
「ああ、お前が次元の壁を越えてやってきたところだよ」
「おーーー!! なるほど!! あの時は何とかという天使長がいましたね」
「お前があっさりと蹴散らしたけどな」
シルヴィスは苦笑混じりにそう返答した。
「はっはっはっ!! この私にかかればたとえ天使長という強大な敵であっても余裕なのです!!」
「ああ、お前でなければあそこまで簡単に退けることはできないだろうな。俺でも神と魔族の力を顕現させないと一蹴はできないからな」
「そうですねぇ〜びっくりしましたよ。あの程度の天使に手こずっていたから面食らいました」
「嘘つけ」
シルヴィスはそう言ってヴェルティアの頬をいつものようにムニュッと摘んだ。
「いたいれすよ〜」
「わざとらしい。全然力を入れてないんだから痛いわけないだろうが」
「えへへ。それもそうですね!! 」
ヴェルティアはニコニコしながら返答する。こういう時のヴェルティアの笑顔は見るものを魅了するものだ。単に造形美だけではない。それ以外のヴェルティアの魅力が加算されている。
(いつもの軽口は叩けるんだが……いざとなると怖いもんだな)
シルヴィスはこれからヴェルティアに告白しようと思ってここにヴェルティアと二人で来たのだが、やはりいざとなると二の足を踏んでしまう。
「ヴェルティア」
「は、はい!! 何ですか!!」
ヴェルティアもシルヴィスが何かのことを言おうとしていることは察している。それはヴェルティアにとっても喜ばしいことで待っているのだ。
「あ、あのさ……お前がここに来た時は本当に驚いたよ」
「は、はい」
「それから、いろんなことがあったな」
「そ、そうですね」
「お前のおかげでキラト達ともすんなり信頼関係を築くことができたよ」
「はい」
「それから……え〜〜と」
シルヴィスは話をはぐらかすというよりも先延ばしにしているようにも見えてヴェルティアはぶすっとした表情を浮かべた。
「もう!! シルヴィス!! さっきから回りくどいですよ!! この優秀な私がシルヴィスが何を言いたいかわからないと思っているんですか!!」
「う……そう言ってもな」
「勇気を出してください!!」
「わかったよ」
ヴェルティアの言葉にシルヴィスは息を整える。
「す〜〜〜は〜〜〜〜〜す〜〜〜〜〜は〜〜〜」
シルヴィスは大きく深呼吸して気持ちを落ち着けている。それをヴェルティアは黙って待つことにする。既に一度突っついてさらに突っつくというのはただの嫌がらせと言うものだ。
「ヴェルティア!!」
「はい!!」
「俺はお前が好きだ!!」
シルヴィスは勢いのままに突っ切ることにした。シルヴィスは戦闘においては知略を駆使して臨むものだが、恋愛に関しては結局のところ不器用であり、最終的に勢いを使うしか思いつかなかったのである。
「は、はい!! う、嬉しいです!! 私もシルヴィスのことが大好きです!!」
ヴェルティアは一瞬で顔をポンと赤くして芸のない返答を行ってしまった。この辺りヴェルティアもまた恋愛に関して不慣れというものだろう。
「はは、やった」
「えへへ、はいやりました!!」
シルヴィスとヴェルティアはそう言って互いにホッとしたように笑い合った。傍目から見ても両想いなのは確実であるのだが、それは100%の成功を意味するものではない以上、不安があるのは当然であった。
「それで、シルヴィス」
「何だ?」
「私たちは……その、恋人同士となったのですけど……何をするんです?」
「え?一緒に飯食ったり、街に出かけたり、楽しく遊んだりするんじゃないのか?」
「それって今までとあんまり変わりませんよね?」
「……そうだな」
ヴェルティアの言葉にシルヴィスは少し悩んで頷いた。
「なるほど!! そう考えると私たちは既に恋人同士だったのですね!!」
「そうなる……のかな?」
「その通りでした!! この私の光る知性もシルヴィスが好きということで少々発揮し損ねていたようです!!」
「まぁ、そんなことだな」
「はい!!」
「それじゃあ、みんなのところに戻るか」
「そうしましょう!!」
ヴェルティアの返答を受けて、シルヴィスがヴェルティアの腰を抱いて自分の方へ引き寄せた。
「シ、シルヴィス!!」
「お前の足が折れてるからな。嫌か?」
「そんなわけないです」
「そっか」
ヴェルティアの返答にシルヴィスは少しだけ笑うと転移魔術を起動した。
景色が変わり、再びキラト達の元に戻ってきた二人を見て全員の表情が祝福のものへと変わった。
二人は変わっていないと思っていたのだが、二人の雰囲気が明らかに変わっているのを察したのである。
「お二人が無事結ばれて私たちも本当に嬉しいです」
「ああ、わかっていたけどやっぱりこういうのはケジメをつけるのは大切だよ。うんうん」
ディアーネとユリはニコニコしながらシルヴィス達二人に語りかけてきた。
「お
そこにレティシアがシルヴィスに話しかけた。
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