第235話 最強なので何の問題も無かった③
「ぎゃあああああああ!! な、なんだこの火はぁぁぁぁ!!」
破極炎に灼かれたディアンリアの口から絶叫が放たれた。今まで経験したことのない痛みがディアンリアを襲っていたのだ。それはこの蒼い炎がただの炎でないことをディアンリアに教えていた。
ディアンリアは苦痛から逃れるように暴れ回る。しかし、炎は消えることなくディアンリアを灼き続けている。
「ヴォ、ヴォルゼイス様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!! このディアンリアをお救いくださいぃぃィィ!! な、なぜ助けてくれないのですかぁぁぁぁ!!」
ディアンリアの絶叫は絶え間なく発せられていく。
「さて……とどめを刺すか」
ディアンリアの様子を確認し、シルヴィスは冷たく言い放つ。そこに一片の慈悲を感じることはできない。
「ヴェルティア」
「ん? どうしたんです?」
「右足、折れてるだろ?」
「う……はい」
「すまないな。無理させた」
「いえ、それはいいんですけどよく気づきましたね?」
「ちゃんと見てるからな」
「……は、はい!!」
シルヴィスの言葉にヴェルティアは一瞬、惚けたが顔を真っ赤にしながら嬉しそうに返答した。
「終わらせてくるから、少し待っててくれ」
「は、はい!!」
シルヴィスはそう言ってディアンリアへ向かって歩き出した。それをヴェルティアは見送った。
「がぁぁぁぁぁぁ!! な、なぜ再生しないィィィ!!」
シルヴィスの放った破極炎は
シルヴィスは歩きながら神剣ヴァルジオスを取り出すと刃を形成する。
(ディアンリア……主従関係でしか他者との関係を築けない……ヴォルゼイスの愛を得ることはついに叶わない……自分の罪に最後まで向き合えなかった……惨めな女、哀れな女……)
シルヴィスはディアンリアへ心の中で語りかけた。
「お、おのれぇぇ!! 神をも恐れぬ不届きものがぁぁぁぁ!!」
「だが許されない女だ」
シルヴィスはそう言い放つと神剣ヴァルジオスを一閃すると一拍遅れてディアンリアの首が飛んだ。ディアンリアの首は弧を描き地に落ちる。
(……がぁぁぁぁ、な、なぜだぁぁぁ!! なぜ再生できないィィ!!)
ディアンリアは自分の再生能力が消えていくのを感じている。それはディアンリアにもう助からないという絶望を与えるものであった。
「ディアンリア……お前がヴォルゼイスを連れていくがいい」
そこにシルヴィスがディアンリアの首に声をかける。シルヴィスの声には抑揚も何もない。ただ冷徹に事実を指摘する響きだけがあった。
「な…………に……?」
「神が死んだ時にその魂がどうなるかは知らない。だがもうお前にこの世での居場所はない。ヴォルゼイスもそうだ。ならばお前が供をすれば良いだろう?」
シルヴィスの言葉にディアンリアの顔が驚きのものに変わる。炎に灼かれる苦痛すら忘れるほどである。
「どうする? 再生能力を捨てればお前はヴォルゼイスの供としてすぐにでも旅立てるぞ」
「……」
シルヴィスの言葉はディアンリアにとってある意味救いであるかもしれない。もちろんシルヴィスはディアンリアの苦痛を和らげるために再生能力を捨てさせようとしているのではない。
シルヴィスはディアンリアがどのような能力を他に持っているかわからないために、勝利の確率を高めようとしているのである。そのために自死にも近い選択を取らせようとしているのだ。
ディアンリアは一瞬迷いの表情を浮かべたが、すぐに覚悟を決めた表情を浮かべた。
「ヴォルゼイス様……今……おそ……ば……に……」
ディアンリアはヴォルゼイスへの想いを口にするとそれきり言葉を失った。蒼い炎はそのままディアンリアの体を灼きつくすと灰となったディアンリアの体が残った。
これはシルヴィスの言葉に従ったディアンリアが再生能力を捨て去ったために一気に灼き尽くされたのだ。
シルヴィスにとってディアンリアは敵であり、同情する意思など一切ない。ディアンリアが救われたかどうかなどシルヴィスにとってどうでも良いことであり、大切なのはディアンリアがこの世から消えることである。
「ディアンリア、お前は最後まで俺の……いや、俺たちの脅威になれなかったな」
シルヴィスはそういうと神剣ヴァルジオスの光の刀身が消え去った。それはこの戦いの終結を宣言したように見えた。
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