第234話 最強なので何の問題も無かった②
シルヴィス達一行はさらに異形さを増したディアンリア達へと襲いかかった。
キラト達三人を加えた七人でディアンリアへと襲い掛かる。しかし、激闘を終えたばかりのキラト達の動きがいつもよりも遥かに鈍い。
特にレティシアとシュレンの動きが明らかに鈍い。もちろん、弱いというにはほど遠い。ディアーネとユリクラスの戦闘力を有しているのだ。
「ところでみなさん相当に疲れてるみたいですけど大丈夫ですか?」
「まぁ、一応治癒魔術はかけてもらえましたので何とか動けます。お姉様はどうなんです?」
「私ですか? よく聞いてくれました!! レティシア!! 今の私はかつてないほど好調なのです!!まさに絶好調と称してもよいでしょう!!はっはっはっ!!」
「はぁ……何よりです」
「さぁ、シルヴィスがどうやったらディアンリアさんを斃せるかを考えてもらいましょう!!」
ヴェルティアの言葉にレティシアを始め全員の視線がシルヴィスに集まった。その間にもディアンリアは周囲に魔術を放ち続けて破壊の限りを続けている。
「とりあえず事情を簡単に説明するとディアンリアは再生能力があってな頭を吹き飛ばしても死なないんだよ」
シルヴィスはそういうと両手を掲げて、魔力を練ると
シルヴィスの練った魔力により放たれた
頭部を吹き飛ばされたディアンリアであったが、やはり数秒後には頭部を再生させた。
「ははははははははははははは!! 無駄だ無駄だ無駄だ!! ヴォルゼイス様の名誉を私は守るのだぁぁぁ!! お前達さえ死ねばそれが叶うのだ!!」
ディアンリアの言葉はもはや狂気に満ちている。
「というわけだ。
シルヴィスの言葉にキラト達は納得の表情を浮かべた。
「じゃあ……こっちは……」
キラトとシュレンがディアンリアの体から生えた神と天使の上半身へ斬撃を放ち、首を斬り飛ばした。斬り飛ばされた首が床に落ちるとチリとなって消え去った。しかし、斬り飛ばされた首が再び生えてきて、再び攻撃を放ってきた。
「く……」
キキキキィィン!!
放たれた攻撃をキラトとシュレンは弾きながら距離をとった。
「これはきついものがあるな」
「ああ、気が一切抜けないな」
キラトとシュレンは現在の自分ではディアンリアの攻撃を捌くのは容易ではないことがわかっているゆえのやりとりである。
「さぁ!! シルヴィス!!現状の説明が終わったということで策を出してください!!」
ヴェルティアがシルヴィスに嬉しそうに話を振った。
「まぁ、やってみるか。すまんがみんな少し時間を稼いでくれ」
「さすがはシルヴィスですね!! うんうん!! でどれくらいですか?」
「十分ほどだな」
「へぇ〜結構かかりますね」
「まぁな、一人だと絶対にしないんだけど今はみんながいるから
シルヴィスの言葉にヴェルティアは嬉しそうに笑った。
「よ〜し、任せてください!! シルヴィスが準備を終えるまで私たちが守って見せましょう!! はっはっはっ!!」
ヴェルティアは高笑いをするとディアンリアへと再び襲いかかった。
「ヴェルティアさん、嬉しそうだな」
「ええ、この戦いの後に楽しみにしてることがあるんですよ」
「ほう?」
「お嬢もシルヴィス様が何をいうのかわかってるんだと思いますよ。だから楽しみにしてるんです」
「というと……そういうことか?」
キラトの問いかけにディアーネとユリは楽しそうに笑った。それを見たキラトはニヤニヤとした表情を浮かべた。
「あ〜なるほどな」
「お姉様もあそこまで喜んでいるということはもう約束された勝利というわけですね」
シュレンとレティシアもキラト達の会話から事態を察したのだ。
「さて、これは楽しみですね」
「そうだな。シルヴィスが何をするか。興味があるし、終わった後も楽しみがあると思うとこちらもやる気が出るというものだな」
「さ、話はまとまりましたのでやるとしましょう」
レティシアとシュレンはそういうと互いに笑い、ディアンリアへと突っ込んだ。キラト、ディアーネ、ユリもそれに続く。
「おーー!! みなさん!! やってあげましょう!!」
ヴェルティアは嬉しそうに言うとディアンリアへ拳を叩きつける。
「ディアンリア……哀れなお前への手向だ」
シルヴィスはシオルの神剣ヴァルジオスを亜空間の中にしまうと両掌の上に炎が浮かび上がった。
左手から立ち上る炎は黒い炎、右手から立ち上る炎は輝くような赤い炎である。
黒い炎は地獄の
炎は全ての罪を灼く……地獄の業火、天界の浄火それぞれ罪を灼くために存在するこの二つの炎を、シルヴィスは顕現させた魔族と神族の力により同時に展開することができる。
シルヴィスはこの二つを合わせることにより全てを灼く炎である『
だが二つの炎は相反する性質のものであり少しでも配合を間違えれば、消滅するか、逆に大爆発を起こす。その限りなく薄い一線をくぐり抜けシルヴィスはこの戦いの最中に進み破極炎を生み出そうとしているのだ。
シルヴィスであってもこの配合には十分はかかるために、戦いではまず使えないと言うよりも使用の選択肢にすらのぼるものではない。
だが、シルヴィスは今は全く焦ることなく二つの炎の配合を始める・
(一人にはやはり限界があるな。だが、仲間がいれば多くのことができる……か)
シルヴィスの表情が柔らかいものとなる。
ディアンリアと戦うヴェルティア達の方へシルヴィスは一切視線を向けない。向ける必要はないことをシルヴィスは
今シルヴィスは赤ん坊が無条件で庇護者を信じるにも似た安心感を感じていた。
(さて……少し、業火が弱いな……浄火はこの強さで固定……っと……)
シルヴィスの両手の炎が一つにまとまり始めた。赤い炎と黒い炎は混ざり合い、蒼い炎へと変わり始めた。
「させるかぁぁぁぁぁぁあ!!」
シルヴィスがしていることをディアンリアは理解しているわけではないだろう。だが、危険なことをしていることは理屈抜きにわかった。ディアンリアは狂気に満たされた思考の中であっても生命の危機を感じ取りシルヴィスへの魔術攻撃を行う。
キキキキィィン!!
しかし、放たれた魔術は仲間達により全て迎撃された。
「ゆけぇい!!」
ディアンリアが命じると体から生えていた神と天使達がディアンリアの体から飛び出してきた。飛び出してきた神や天使達であるが、それらはヴェルティア達により次々と撃破されていく。
しかし、ディアンリアの体から次々と神と天使たちが飛び出してくる。この後から後からくる状況であったが、迎撃するヴェルティア達の実力の高さからシルヴィスに近づくことはできない。しかもヴェルティア達は放たれる魔術に対処しながらである。
「まとめて吹き飛ばしてくれる!!」
ディアンリアは両手を掲げて巨大な魔法陣を描き出す。そこに集まる魔力は今までとは桁違いのものであることを全員が察した。
「くっ!!」
「まずい」
キラトとシュレンがディアンリアの意図を察するとシルヴィスのガードに入ろうと動こうとするが、神と天使に阻まれて近づけない。本調子であれば蹴散らすのだが、現在の状況ではそれができない。
「まずいです!! お姉様さ……ま」
レティシアが鎖で神の一体を顔面を打ち砕きながら、ヴェルティアに声をかける。そしてヴェルティアの行動を見て、さすがに絶句した。
ヴェルティアが神と天使達を蹴散らしながらシルヴィスの前に立ったのである。
「ヴェ、ヴェルティア様!!」
「お、お嬢!!」
ヴェルティアの行動にディアーネとユリの声がさすがに上ずった。ディアンリアの放とうとしている一撃は躱す以外の選択肢はないほどの破壊力を感じさせるものであった。
ヴェルティアが前に立ったことをシルヴィスは察したのか破極炎を作ることに集中するようで避けるつもりはないようである。
「消えろぉぉぉぉぉ!!」
ディアンリアは魔力の塊を放った。射線上にいた神と天使は一瞬で消滅しヴェルティアに迫る。
「シルヴィスは私が守り切って見せますよ!!」
ヴェルティアは両手に魔力を込めるとディアンリアの魔力の塊を受け止めた。
「ははははは!! まとめて消し飛べぇぇぇ!!」
ディアンリアは勝利を確信し歪んだ笑みを浮かべた。
「な……」
しかし、次にディアンリアの勝利を確信した笑みが凍りつく。放った魔力の塊が天空に向かって飛んでいった。
ヴェルティアが両手で受け止めてからそのまま力任せに蹴り上げたのである。
「ば、ば……か……な……」
あまりにも理不尽な行動にディアンリアだけでなくキラト達もさすがに驚きを隠せない。それだけ衝撃的であったのだ。そしてヴェルティアの強さをよく知るレティシア達も同じように呆気に取られた。
ディアンリアの放った一撃は間違いなく大陸が消し飛ぶレベルの破壊力であったのに、ヴェルティアはそれを耐えたのではなく弾き飛ばしたのである。それはたとえヴェルティアであっても不可能な
ヴェルティアが得意満面な笑みを浮かべたところに一瞬だけ表情が曇った。
シルヴィスがヴェルティアの前にでる。その瞬間にシルヴィスが何やらヴェルティアへと声をかけた。その声がヴェルティアだけに聞こえたのだが、よほど嬉しいものだったのだろう。ヴェルティアの表情に輝いた笑顔が浮かんだ。
シルヴィスは前に出た瞬間に形成した破極炎をディアンリアへ向けて放った。
放たれた破極炎はディアンリアへと一直線へと向かう。
「ひ!!」
ディアンリアはシルヴィスの放った破極炎を腕を交差させて耐えようとした。しかし、それは叶わない。
ほぼ一瞬でディアンリアの両腕を消滅させると、そのまま直撃した。
ディアンリアの全身を蒼い炎が包んだ。
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