第233話 最強なので何の問題も無かった①
ディアンリアはシルヴィス達を睨みつけると空中に魔法陣が描き出した。その数は軽く百を超えている。
「いきなり、この数の魔法陣を展開させるなんてやりますね!!」
ヴェルティアは百を超える魔法陣を一息で描き出したディアンリアの技量は相当なものなのは間違いないにもかかわらずヴェルティアは余裕の態度を崩さない。
「結構、ややこしそうだな」
「まぁじっくりやるとしましょう。何しろディアンリアさんには再生能力がありますから長引くとは思いますけど頑張りましょう!! さぁてシルヴィス!! ディアーネ!!ユリ!!いきますよ!!」
ヴェルティアはブンブンと腕を回し始めた。
ヴェルティアがディアンリアに襲い掛かろうとした瞬間にシルヴィスが手を伸ばしヴェルティアの襟首を掴んで止めた。
「ぐぇ!! な、何をするんですか!!」
ヴェルティアがシルヴィスに抗議を行うとヴェルティアの一歩前の位置に光術が降り注いだ。
「お前、考えなしに突っ込むなよ」
「確かにそうですね!! この私がこんな失敗をするとは!! でもしかし!! もう大丈夫です!! それじゃあ改めていきますよぉ!!」
ヴェルティアはディアンリアへ改めて襲い掛かった。ヴェルティアが間合いに入ったと同時に魔法陣から次々と魔術が放たれた。光術、炎術、氷術、雷術、風術が一斉に放たれる。
ヴェルティアは自身に放たれた魔術の一斉照射を両手に魔力を込めて最小の動きで躱しながらディアンリアへと迫っていく。
「う〜ん、あいつどうしてあんなことできるんだろうな?」
ヴェルティアの快進撃を見てシルヴィスは称賛と呆れを半々に言う。
「それはもちろんヴェルティア様ですから」
「そりゃお嬢だから」
ディアーネとユリの返答は中々達観したものだ。ある意味、ヴェルティアとの付き合いの長さがこの会話に表れているといえる。
「シルヴィス様、頑張ってくださいね」
「そうだよ。シルヴィス様はある意味みんなの希望だからね」
「頑張ります」
二人の激励にシルヴィスは苦笑しながらも断言した。シルヴィスの断言に二人は顔を輝かせた。
(どうやらディアンリアが斃れれば……)
(ああ、シルヴィス様とお嬢が結ばれる……約束された勝利というやつだよ!!)
ディアーネとユリはニンマリと笑い互いに頷くとそれぞれ武器を構えるとヴェルティアの後に続いた。
ディアンリアの間合いに入った瞬間にいくつかの魔術が二人に注がれた。二人の実力は高いが、ヴェルティアのように快進撃をするに至らない。しかし、二人への魔術が放たれることでそれだけヴェルティアが動きやすくなると考えての行動である。
「ディアーネさんとユリさんってやっぱりヴェルティアの補佐が手慣れてんだよな。ヴェルティアも頼りにするはずだ」
シルヴィスはそう発すると魔法陣を展開させた。シルヴィスの周囲に五十ほどの魔法陣を描き出すとそのまま魔術を放つ。放った魔術は
この時放った
だが、シルヴィスほどの実力者の
シルヴィスの
「お〜さすがです!! みなさんのサポート本当にありがとうございます!!」
ヴェルティアは自分に注がれる魔術が少なくなったことで進みやすくなったのはシルヴィス達の支援が入ったためであると見なくても即座に察したのである。
ヴェルティアはディアンリアのムカデと化した部分へ思い切り、そうそれは気持ち良いくらいに容赦ない拳を叩きつけた。
ドゴォォォ!!
ヴェルティアの拳の一撃は凄まじく破城槌を打ち込んだような音が響き渡った。ヴェルティアを受けたディアンリアの体は五メートル程の距離を飛んで着地した。
「あいつ……やっぱりすごいわ」
シルヴィスはディアンリアの意識がヴェルティアに向いた瞬間を見逃すようなことはしない。
まるで瞬間移動したかのような速度でディアンリアの間合いへと飛び込むと跳躍してディアンリアの顎に膝を入れた。
ゴギョォォ!!
形容し難い音が発せられる。ディアンリアの口から砕けた歯と血が吐き出された。シルヴィスはすかさず追撃に入る。シルヴィスの追撃は
極限まで研ぎ澄まされた
その威力は凄まじくディアンリアの頭部を吹き飛ばし、そのまま射線上にあったムカデと化した尻尾の部分も一緒に吹き飛ばした。
「おお、さすがですねぇ!!」
「まぁな」
「でも終わってませんよ」
「想定内だよ」
シルヴィスとヴェルティアは互いに笑うとディアンリアへの追撃を放とうとした。
「下等生物がぁぁぁぁ!!」
ディアンリアは再生能力を発揮し頭部を再生し、呪詛の言葉を吐き出しながらシルヴィスとヴェルティアへと襲い掛かってきた。
ディアンリアは描き出された魔法陣から魔術を一斉に放ち続けながら同時に四本の腕を使った格闘戦を挑んできた。
「おお!! 殴り合いですね!! 受けてたちましょう!!」
ヴェルティアはテンションを上げてディアンリアと激しく撃ち合う。
ドン!! ドォン!! ドドド!!
ヴェルティアとディアンリアの激しい格闘戦は周囲に衝撃波を巻き起こした。
ディアーネとユリはシルヴィスに放たれる魔術を斬り払うために両隣に立った。
「さすがわかってらっしゃる」
シルヴィスはニヤリと笑うと
「そりゃ、補佐するって言いましたものね」
「そういうことです」
シルヴィスの返答に二人は笑って返した。
ドン!!
再びシルヴィスの練り上げた
「ぎぃぃぃ!! おのれぇぇえ」
ディアンリアの抉られた右半身は即座に再生したが、やはりディアンリアの苦痛と屈辱は凄まじいものなのだろう。吐き出す呪詛の声が険しさを増した。
「余裕ですねぇ!!」
ディアンリアの意識がシルヴィスに向いた瞬間に今度はヴェルティアがディアンリアの顔面に拳を入れる。
ドゴォォォォ!!
ヴェルティアの拳を受けたディアンリアは大きくよろめいた。
「ぐ、おのれ……」
ディアンリアは怒りのこもった目をヴェルティアへと向けると両腕を交差させて思い切り開放すると凄まじい衝撃波が発せられた。シルヴィス達は防御陣を展開しつつ距離を取った。
張った防御陣はアサリと打ち破られたが、シルヴィス達は下がり距離をとったことで全く損害を受けていない。
「私はヴォルゼイス様の名誉を守るのだぁぁ!! モノ共!!この不埒モノ共を殺せぇぇぇえ!!」
ディアンリアの下半身の部分から無数の人の上半身がニョキニョキと生えてきた。
『あぁ……ディア……』
『ぐぉぇぇ……』
『あ……ぐぉ……』
生えてきた上半身は取り込んだ神達、天使達のものであった。目が虚であり意識があるのかはわからないがその悍ましさは例えようのないものだ。
「さて、そろそろ来ると思うんだけどな」
「そうなんですか? ああ、そう言われれてみればもうあっちも戦争どころじゃないでしょうからね」
ヴェルティアがそう言い終わったところで、一つの魔法陣が浮かび上がった。
「お、どうやら最終幕には間に合ったみたいだな」
「ディアンリア……何という事を……」
「お姉様、お
転移陣から現れたのはキラト、シュレン、レティシアの三人である。
「まさかシュレンまで来るとはな。どういう流れだ?」
「ああ、世の中には付き合いとか成り行きという言葉があってな」
「なるほど十分すぎる答えだ」
「後でそっちの
「任せろ」
シルヴィスとシュレンはそう言って笑う。
「シルヴィス」
「ん?」
「シオルがこれをお前にってさ」
キラトがシルヴィスに剣の柄を放る。
「そうか……」
シルヴィスは渡された剣の柄に魔力を込めると光の刀身が形成された。形成された光の刃は弧を描き、
「そういう事だな」
「ああ……キラト助かったぞ」
「大切に使えよ」
「わかってるさ」
シルヴィスの返答にキラトとシュレンは静かに頷いた。シルヴィスの声にはシオルへの感謝の念がふくまれていることを感じたからである。生前、わかり合うことはできなかったが、シルヴィスの言葉はシオルにとって嬉しいものであろう。
「シュレン!! 貴様はなぜキラトと共にいる!! 神の誇りを忘れたか!!」
「お前を殺すために手を組んだ。それだけのことだ」
シュレンは吐き捨てるように言い放った。
「さて、ディアンリア……そろそろ退場してもらおうか。ご苦労だったな」
シルヴィスの言葉にディアンリアの狂気に満ちた表情がさらに歪んだ。
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