第218話 神魔大戦 ~それぞれの決戦へ⑦~

 シルヴィスの言葉を受けて空間から金色の髪を靡かせ武装した女神が現れた。


「異端者め。よくもここまで狼藉をはた……」


 女神はシルヴィス達を睨みつけながら呪詛の言葉を投げかけようとした。


 しかし、その呪詛の言葉はシルヴィスの先制攻撃によりあっさりと踏み躙られることになった。


 シルヴィスの放った先制攻撃は巨大な竜巻……しかも炎を纏うという凶悪なものだ。


 女神の供として一緒に登場してきた数十の神、数百の天使達がいたが、炎の竜巻にあっさりと飲み込まれてしまう。


「うわぁぁぁぁ!!」

「ヒィィィ!!」

「ぎゃあああああ!!」


 炎の竜巻に飲み込まれたもの達の絶叫が響き渡る。


「う〜ん、シルヴィスさすがにひどくないですか?」


 ヴェルティアがシルヴィスの先制攻撃に対し非難するような言葉をいう。


「そうか? どうせこいつらの言うことなんて内容が陳腐なんだから聞かなくてもいいだろ」

「それはそうなんですけど、あそこまで威厳たっぷりに登場したんですから相当な大物だったんじゃないですか?」

「かもな。まぁ大した問題じゃないだろ。この程度・・・・の術で死ぬようなら大物じゃないから話を聞かなくてもいいよ」

「まぁそれもそうですね!! あの程度・・・・の術で死ぬようなら最初から出てこなければ良いわけですからね!! うんうん!! シルヴィスよくやりましたよ!!」


 シルヴィスの言葉にヴェルティアはあっさりと自分の意見を転換させた。


 ドパァァァァン!!


 女神が長剣を振るった姿が見え、女神がシルヴィスの術を吹き飛ばしたことがわかる。炎の竜巻がなくなり巻き上げられた神や天使達が地面に次々と落ちてきた。


「おのれ……下等生物どもが!!」


 女神が凄まじい憎悪のこもった言葉をシルヴィス達へ叩きつける。その声に込められた憎悪は聞くものの恐怖感を与えるに相応しいものであったが、残念ながらシルヴィス達は何の痛痒も感じている様子はない。


「おーーっ!! さすがに神様ですねぇ!! まぁこれくらいはやってもらわないとここまできた意味がありませんからねぇ〜」


 ヴェルティアの明るい声は女神のプライドを傷つけるには十分であったようだ。


「このディアンリアを……」

「お前がディアンリアなのか?」


 女神がディアンリアと名乗った瞬間にシルヴィスが話を打ち切るように問いかけた。相手が喋っている状況で話を打ち切るように話をするのは限りなく失礼な行為であるがもちろんシルヴィスは完全に意図的に行なっている。


「シルヴィス、ディアンリアさん・・が話している最中でしたよ。あまりそういう失礼なことをしたらかわいそうですよ」

「そうか? だってディアンリアってほら俺を貶めるために……何だっけあの……ルキナさんから何かされたから祝福ギフトを与えることができなかったとかいう恥ずかしすぎるこじつけをした頭の悪い女神だぞ? そんな残念な思考回路しか持たないアホが話を遮られたことを失礼と認識できるわけないじゃないか。大丈夫だよ」

「あっ、それもそうですね!! ディアンリアさんにそんな知性があるはずありませんでしたねぇ〜うんうん」


 ヴェルティアの言葉も中々ひどいものである。


「下等生物どもが……このディアンリアの力を見せてくれる!!」


 ディアンリアは激昂すると地面に転がっている部下達の死体に生み出した珠を放った。放たれた珠は死体に入り込んでいくと体から光を発し死体達が立ち上がった。


「ディアンリア様、面目次第もありません」

「構わないわ。この無礼者どもを皆殺しにしなさい!!」

「はっ!!」


 ディアンリアの命令を受けた蘇った神や天使達がシルヴィス達へ憎悪の視線を向けてくる。


「う〜ん、どうやらディアンリアは蘇生させることができるみたいだな」

「そのようですね。もしくはさっきの神達のように再生能力を与えたのかもしれませんね」

「時間がかかりそうだな。面倒だが動かなくなるまで殺し続けるか、ディアンリアを始末するとしよう」


 シルヴィスの声と言葉は全く蘇ったもの達に脅威を感じていないことが丸わかりである。


「あっいいですよ。シルヴィスはヴォルゼイスさんを殴り飛ばしたいことでしょうから、ここは私達で引き受けますよ」

「いいのか?」

「ええ、大して強くない連中ですし、面倒なのは蘇生することくらいですし私達でやりますよ」

「それもそうだな。それじゃあ、俺はヴォルゼイスのところに行くからこのアホウ共の相手は任せるぞ」

「ええ、ゆっくりやりますよ。シルヴィスもヴォルゼイスさんと一騎打ちをしたいでしょうからね」

「お前っていつの間にそんな気配りをできるようになったんだ?」

「ふふん、このヴェルティアは常に進化し続けているのです!! さぁ!! 褒めてください!!」

「そうなんだ。スゴイネ」


 シルヴィスの棒読みの賛辞であるが、ヴェルティアは得意満面な笑みを浮かべた。


「よ〜し!! やる気が出てきましたよ!! さぁディアンリアさん!! 私が相手します!! もう始めちゃっていいですか? いいですよね? わかりました!!」


 ヴェルティアがいつものテンションをディアンリアにぶつけたところで右腕をブンブンと振り回し始めた。


「なぁ、お嬢だけで十分じゃないか?」

「あきらめましょう。ヴェルティア様がやる気になってますから仕方ないですよ」

「シルヴィス様もお嬢をあんまり煽らないでほしいよな」

「それは仕方ないですよ」

「だよなぁ……ほれ……」

「二人とも行きますよぉ!!」


 ディアーネとユリのぼやきにも似たやりとりが中断されたのはもちろんヴェルティアが二人を率いることになったからだ。


 ヴェルティアが一気にやる気になったままブンブンと腕を振り回しながら、ディアンリア達へと飛び込んでいった。


 ドゴォォ!!


 ヴェルティアの拳をまともに受けた神の一柱が吹き飛ぶと城壁に叩きつけられた。その勢いは凄まじくヴェルティアの拳の威力がいかに凄まじいものか示している。


「さぁ!! ディアンリアさん、行きますよ!!」


 ヴェルティアはビシッとディアンリアを指差した。


(なんか……ディアンリアが可哀想になってきたな……まぁ、今までやってきた事の報い・・だよ。諦めろ)


 シルヴィスは心の中でディアンリアに言葉をかけるとヴォルゼイスへ向けて駆け出した。

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