第148話エルガルド帝国動乱④
「第三師団と第六師団をラディンガルドへ移動させる案は?」
「しかし、第三師団と第六師団を移動させれば今度はミュードルの防衛が……」
「く……やはりレンヤ様達がいないと穴を埋められない」
ラフィーヌの苦い表情に、エルティーユ将軍は苦しそうな表情を浮かべた。シルヴィス達にレンヤ達三人が連れ去られた事で完全に
今まで
しかも、今回は救世主であるレンヤ達が連れ去られ明らかに、人族いやエルガルド帝国の戦力は落ちている。この機を新たな魔王が逃さないのではないかということでラフィーヌ達は対応に追われているのである。
「いったいどうすれば……」
ラフィーヌの呟きは弱々しく追い詰められているという印象が強い。
バタン!!
突然扉が開けはなられ全員の視線が扉を開け放った無礼者へと注がれた。入って来たのは騎士であった。あまりにも不躾な態度を怒鳴りつけようとエルティーユ将軍が怒鳴りつけるよりも早く騎士が口を開いた。
「も、申し上げます!!ま、魔族の大軍が!!」
「何ですって!!」
騎士からもたらされた報告にラフィーヌが立ち上がり驚きの声を上げた。
「既にこの帝都をぐるりと取り囲んでおります!!」
「そんな馬鹿な!! この帝都を取り囲むほどの大軍がどこから湧いて出たというの!? 」
「わ、わかりません!! とにかくぐるりと取り囲んでいるのです!!」
「そ、そんな……」
ラフィーヌは報告に力が抜け椅子に座り込むと呆然と呟いた。ラフィーヌの態度に全員の顔から表情が消えた。ラフィーヌの様子はエルガルド帝国が絶望的な状況に置かれていることを自覚させられるものであった。
しかし、次の瞬間にはラフィーヌは我に帰ると立ち上がり声を張り上げた。
「エルティーユ将軍!! すぐに帝都の防衛指揮を執りなさい!!」
「はっ!!」
ラフィーヌの命令を受けたエルティーユ将軍は立ち上がるとエルガルド軍の敬礼を行なった。
「傭兵ギルド、冒険者ギルドに協力要請!! 市民の中で戦える者に武器を配布!!」
「はっ!!」
「エグゼスは市民の義勇兵を編成しなさい!!」
「はっ!!」
「ウィルバズは各諸侯へ救援要請!!」
「はっ!!」
ラフィーヌは矢継ぎ早に指示を出していく。いち早く絶望的な状況にあってすぐにやるべき指示を出せるのはラフィーヌの能力は非凡ではない証拠であろう。
「まずはここを乗り切るわよ!!」
「はっ!!」
ラフィーヌの檄にエルティーユ将軍達は覇気のある声を出して執務室を出ていく。
一人残されたラフィーヌはまたしても力が抜けたように座り込んだ。
「……どうしよう。せめてセラムとアジェリナだけでも逃さないと……」
ラフィーヌの言葉は苦渋に満ちている。
「……今までのエルガルドが犯してきた罪の精算を行うべき時が来たというわけなの……お父様、お母様……お兄様」
ラフィーヌの言葉は限りなく苦い。
「アルマ!!」
ラフィーヌは崩れ落ちそうになっていたが、何とか踏みとどまると忠実な次女を呼ぶ。
ラフィーヌの求めにアルマは即座に現れる。
「魔族が攻めてきたというのは知ってるわね」
「はい」
「私も前線に立つわ」
「な!! 何を言われます!!」
ラフィーヌの言葉にアルマは顔を青くしていう。
「勘違いしないで、私が戦うわけではないわ」
「え?」
「この状況を覆すためには皇室の誰かが壇上に立つ必要があるのよ」
「ラ、ラフィーヌ様……」
アルマはラフィーヌの提案を止めることはできないと思った。実際にこの絶望的な状況を覆す手段として皇室が前線に立って兵を鼓舞するというのはその効果は絶大であることは認めざるを得ない。
「効果はわかるでしょう?」
「……はい」
「では用意して!!」
「はい!!」
アルマは勢いよく返答すると飛び出していった。
「お父様、お母様、お兄様……力を貸してください」
ラフィーヌの声に確かな力が籠った。
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