第28話 天使長アグナガイス戦①
アグナガイスは一瞬でシルヴィスとの間合いを詰めると斬撃を繰り出した。
ビシュン!!
凄まじい速度で放たれたアグナガイスの斬撃であるが、シルヴィスは
キィィィィン!!
(ち……)
シルヴィスはアグナガイスの凄まじい斬撃に吹き飛んでしまう。
ズザササササ!!
シルヴィスは地面に着地しそのままの勢いで十メートルほどの距離をすべりようやく止まった。
「ふ、思ったよりも軽いな。今程度の一撃で吹き飛ぶとはな。拍子抜けだったぞ」
アグナガイスも地上に降り立つとシルヴィスを嘲笑する。
「ふ……」
そして今度はシルヴィスが動く。音を置き去りにするかのような超人的な速度で、アグナガイスの間合いに飛び込んだ。
アグナガイスは横薙ぎの斬撃を放つ。シルヴィスはその必殺の一撃を
「な……」
アグナガイスから驚きの声が漏れる。アグナガイスが驚いたのは、剣からまったく衝撃を感じることがなかったからだ。まるで水が地形に沿って流れるように、軌道が勝手に逸れたような感覚だったのだ。
ドゴォォォォ!!
そして次の瞬間にシルヴィスの前蹴りがまともにアグナガイスの腹に直撃した。
「が……」
今度はアグナガイスが二十メートルほどの距離を飛ぶ。
ズサササササッ!!
「どうした? ずいぶん軽いな……拍子抜けだったぞ」
シルヴィスはあてつけを言う。シルヴィスのあてつけにアグナガイスはギリッと唇を噛みしめた。
「ふん……いい気になるなよ……小僧!!」
アグナガイスは剣を構えると即座に動く。シルヴィスもそれに応え間合いを詰める。一瞬後には互いの間合いに入り、両者は激しく技の応酬を始めた。
アグナガイスは横薙ぎを放ちシルヴィスが躱すと二段突きを放つ。シルヴィスは二段突きを躱すが、アグナガイスそのまま首を薙ぎにくる。
シルヴィスは体を沈め、首薙ぎの斬撃を躱すと同時に
アグナガイスは放たれたシルヴィスの斬撃を、戦いの中でいつの間にか身につけていた盾で受ける。
ギギィィィ!!
シルヴィスの
一瞬ごとに攻防が入れ替わる凄まじい戦いが、シルヴィスとアグナガイスの間で展開されている。
一流の実力者でも両者の戦いを見ることができる者は稀である。そう断言できるほどの戦いであった。
(信じられん……本当に人間か?)
アグナガイスはシルヴィスの技量に舌を巻き始めていた。シルヴィスの攻撃は鋭く、速く、そして予測が限りなく困難であった。虚実を高レベルで織り交ぜて放たれるシルヴィスの攻撃にアグナガイスは対処が少しずつ困難になりはじめていた。
(く……そっ!!)
アグナガイスは胴薙ぎの斬撃を放つ。シルヴィスは当然のごとく
しかし、アグナガイスは軌道を変え逆袈裟斬りへと斬撃を変えた。その斬撃はまさに芸術だった。しかし、シルヴィスはその斬撃にすら対応する。
シルヴィスは
シルヴィスは左拳を放ち剣の内側に潜り込ませるとそのままアグナガイスの顔面を打った。
まともに受けたアグナガイスは大きくのけぞったが、一瞬後には体勢を取り戻した。そこにシルヴィスの
アグナガイスは辛うじてその斬撃を躱すことに成功するが頬をざっくりと切り裂かれてしまった。
「うぉぉぉ!!」
アグナガイスは横薙ぎに斬撃を放ち、シルヴィスから距離をとった。
「うん、やはり戦闘では俺の方が上だな」
「何だと!?」
「怒るなよ。俺は事実を指摘しているに過ぎない。天使というのはどうも自分の力を過大評価してるな」
「過大評価だと?」
「もしくは相手を過小評価だな」
「……」
シルヴィスの言葉にアグナガイスは反論できなかった。神に作られた最高の芸術であると自負し、他者を理由もなく見下していたのは事実だったからだ。
「さて……言っておくがこれからは一方的になるぞ」
「何だと?」
「わからんか?さっきの攻防で俺はお前の顔面に一撃入れたろう?」
「……それがどうした?」
「もう格付けが済んだというわけさ」
「格付け……だと?」
「そうだ。お前の技に俺は対応することが出来るのに対して、お前はまだだ。もちろん俺とお前の技の応酬は超高等技術の応酬なんだろうな。だが、俺はお前の技を全てにおいて上回っている」
「ふ……確かにお前は強いな。私と互角なのは認めざるを得ないだろう」
「お前、話聞いてたか? 天使は意思疎通ができない種族か?」
シルヴィスの呆れた表情にアグナガイスはニヤリと嗤う。
「何とでもほざけ!! 最後に立っていた者が勝者だ!!」
アグナガイスはそう言うと翼をはためかせ飛翔すると十階建ての建物ほどの高さで止まると両手を天に掲げると巨大な魔法陣を顕現させた。魔法陣から放たれる魔力は凄まじいの一言であった。
(ほう……中々の術のようだな。これがあいつのとっておきか)
状況から見て、この術がアグナガイスの切り札であるのは間違いない。
シルヴィスがアグナガイスの心を折るために魔力を練り始めたときに、だれも予想しない事が起こった。
シルヴィスの目の前の空間にヒビが入ったのだ。
「な……」
これには流石にシルヴィスも驚くとヒビから距離をとった。そして次に空間から貫手が現れた。ヒビはますます大きくなり両手がヒビに差し込まれそのまま扉を開くように開けられた。
「あー!! やっと見つけましたよ!! うんうん。やっぱり私ってすごいですねぇ~」
場にそぐわない脳天気な声が響いた。
「お前……どうして?」
シルヴィスの声には確かな困惑の感情があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます