第9話 俺の勝ちっ!なんで負けたk

おはようございます。


どうもこんにちは、風呂上がりに全裸で街を走っていたらいつの間にか変なあだ名を付けられていた男です。


はいそうです。普通に服を着て歩いていたら、優しそうなおばあちゃんから『あら今日は服を着てるのね』ととても穏やかな声で言われました。


俺はそっと涙を拭って、『コレが普通です』と言い残し、その場を立ち去りました。


あのときは本当に心に来るものがありました。


前回死にそうだったんだけど、目を閉じた瞬間俺はふと思ったのだ。

最後の一言がソニックムーブでいいのかと。

どうせならフェルマーの最終定理てきな難問を提起して死にたいなと。


あとは、先週渡された論文の矛盾点は出さないといけないし、新しく発明した機械の説明書は書かなきゃだし、明後日はアメリカに行ってなんか髭の濃いおじさんと対談しなきゃだし。


てか、今死んだら絶対妹に怒られるし。

人生で一人くらいは彼女欲しいし、街をデートとか、恋人繋ぎとか、膝枕とか、抱擁とか接吻とかしてみたいし…………。


こうやって考えるとまだまだ死ねないな。

そう思った俺は、パチリと目を開けた。


倒れ込むように体勢を崩した俺に迫りくる純銀に光る研ぎ澄まされた刃。


うっわぁ痛そー。あたったら絶対痛いじゃん。

てか怪我するじゃん。いや死ぬじゃん。


じゃんじゃんと頭の中で連呼しながら俺は小さくつぶやいた。


「『F1起動』」


コンマ数秒。本当に人間では認識不可能なくらい瞬時に、俺の右手の指先が赤く光った。


『コード、Gガチ,D,Yヤバい,Kから,T助けて


俺はそのエアーキーボードに5文字を入力する。


「はぁぁぁぁっ!!!!!!」


ここまでやったらもう残る時間も少ない。

俺の尻は地面に付きそうだし、襲いくる刃とは10センチほどしか距離がない。


「『SStart!!』」


俺は今持ち得る空気を全て吐ききるような勢いで叫び、迫りくる刃の前に自分の右手を差し出した。


「ぐぁぁぁっ!!!!!!」


女の子が血気迫る声で吠えた瞬間に、俺の尻骨は地面に突き刺さり……………彼女の刀は真っ二つに折れた。


「っ!!!!!!!」


その光景を見て女の子はありえないと驚きの表情を見せる。


まぁそうだろう。

だって、真剣が生身の人間の右手にあたっただけで折れるはずがないもの。


はいそうですみなさん。俺はチートを使いました。

このままだと負ける……………というか死ぬので、科学の力を使わせて頂きました。


体の表面に超薄い超合金の膜をまとって守り、刃が手に触れた瞬間に超音波を発射して折りました。


ふっはっっははっは!!!!!

コレが科学の力だ!! 人間様の十八番だ!!!!!


俺の開発した超小型自己防衛機能付き指輪の前にして、日本刀なんてただの鉛同然!!!!!!!


科学に物理が勝てるわけないのだよ!!!!!


(まぁ、この超小型自己防衛機能付き指輪は物理学が主に使われてるけどね。)


ぐふふふふふふふふふ!!!!!! どうなろうと勝ちは勝ちだ!!

まぁルール知らないからどうなったら勝ちかもわからんけど。


とにかくっ!!!!!! 生き残れただけで俺の勝ちなのだよ!!!!!


俺は強烈に痛みを主張するお尻をいたわりながら、呆然と立ち尽くす女の子と…………審判の教師を嘲笑った。



………………クソぉっ!!! 死ぬほど尻痛いっ!!!!!!!!

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