第4話 紫のこころっ!

私、紫は怒っていた。


それは未だに姿を表さない対戦相手に対してだ。


日本史上最狂の異端児


とか言われて学校にもほとんどこないやつが、やっと来るって言うから楽しみにしてたのに……。


結局、結局あなたは私とは会ってくれないのね…………莫迦 市乃。


私は落ち着かない心で剣を振り続ける


真剣で代表同士が切り合うとかいうこの頭のおかしい競技も、あなたが相手だから出ようと思ったのに…。


貴方は、私のことなんて眼中にないのかしら…?


私はもやもやを振り払おうと真剣を振り続けた。


放送では彼についた世界のホコリとも言える名誉ある名と……………日本のホコリとも言えるクソのようなあだ名が発表されていた。


貴方は、いつもそうやってふざけて………。


「両者向かえっ!!!!!」


教師が腕を振り下すのを横目に、誰もいない地面を見た。


貴方は……………やっぱり私と戦ってくれないの………?


ここにはもう来てくれないの…?


痛い痛いと主張する胸をドンとたたいて私は、生徒会長として、団長として凛々しい姿を見せた。


「白組代表!!!市乃は早く来い!!!!」


先生の最後の叫びも風にのって消えてしまう。


「………ふんっ……」


私はもうどんな気持ちなのかわからなくて、クセの鼻笑いをしてしまう。


……………もう、だめなの…。


私がぎゅっと剣の柄を握りしめたその時。


「すまん待たせた」


そんな声が響いた。


顔を上げて門に手をつく彼の姿を見たとき、私は思わず。


「遅すぎよ」


そんなことを言ってしまった。






莫迦 市乃。


貴方はようやく…………私を見てくれるのね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る