第3話 へんt……バカ参上
『えっと、続いて彼の二つ名をご紹介します。』
変な空気で満たされた校内に実況者の声が響き渡った。
『巷で彼のことを人々はこう呼びます、』
『物理の天才』
『神様の愛した数学者』
『寵愛の身』
『日本の宝』
『神が贔屓した子』
『伝説を超越した存在』
『一人で世界文明を10000年進めた男』
『宇宙の特異点』
『…スク水を世界一愛する者』
『……ケモラーの鑑』
『あ、アメリカ政府に絶大な信頼をおかれながら、日本で英語の難しさとクソさを声高々に語った唯一の男』
『…てっ天才とバカの紙一重の差を反復横飛びし続ける奴…』
『濡れた髪のままで……パンイチで耳かきサイコーと叫びながら歩く、世界の権威』
今度は数回に分けて呼吸をして、時折沈黙をはさみながら実況者が、未だに現れない白組代表の紹介をした。
『こちらも最後の五つはご紹介する予定ではありませんでしたが、本人の熱い希望により今回特例として紹介させていただきました。』
何故か何も悪くないはずの実況者が申し訳無さげに、再び付け足す。
『ごほん』
実況者はそう仕切り直して、
『これ程までの権力、地位、名声を十代にして手に入れながらも、近所のスーパー『山代ヤドカリストア』をこよなく愛するのが、今回白組の代表者である、
白組代表の紹介を終えた。
「両者向かえっ!!!!!」
教師がビシッと腕を振り下ろして叫ぶ。
……………されど、白組代表は現れない。
「白組代表!!!市乃は早く来い!!!!」
……………されど、白組代表は現れない。
『えぇ、試合開始まであと一分を切った未だに市乃選手は現れません。』
実況者が戸惑いながら、もはや半分呆れ気味に言う。
周りの観客たちも白組代表が忙しすぎて来れなかったとか、ただたんに怖かったとか色々な理由を思い浮かべて、彼が来ないものと思い始めていた。
「……………。」
教師は足元を見つめて歩いていくアリの数を数えている。
「…………ふんっ」
最後には紅組の代表までもが、対戦相手の登場を無いものとして、心の底からなめるように鼻で笑った………………………それと同時に、
「すまん遅れた」
グラウンドの恥に作られた入口の柱に手をついて、うっすらと汗を浮かべた至って普通の学生服を着た男子生徒が、そう大きくないのにも関わらずその場の全員に聞こえるような澄んだ声で、そうつぶやいた。
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