魔女

「ではわたくし達はこれで。いつかまた会えたら魔女との戦いについて話してあげますわ!おーっほっほっほっほ」

「お嬢様はルリ様のことを大層気に入られたご様子です」

「ですからぁ、また会えたら仲良くしてあげてくださいねぇ」


 そんなことを言いながらメルディア達はさらに森の奥へ進んでいった。

 なんだか森が一層静かになった気がしたルリは、そっとたき火を消した。


「うーん……魔女、かあ……」


 メルディアは恐ろしい存在だと言っていたが、果たして本当なのだろうか。

 おとぎ話の魔女は恐るべき力を持っていつつも優しい存在として描かれていた。

 結果的に大きな魔女戦争と呼ばれる大戦を引き起こしてしまったが、それは彼女の本意ではなかったのだ。


「……会ってみたいな」


 ルリは、不思議と魔女への好奇心がふくれあがっていくのを感じた。

 そのままルリは身支度を整えて、歩く準備をしていく。

 いざという時にすぐに動けるようにテントなどは寝る直前にしか出していない。


「……会いに行こう」


 ルリはそのまま、森の中を歩きはじめる。

 森の奥深くへ、ルリは迷いなく進んでいく。


「魔女……こっち、かな」


 決して適当に歩いているわけではなく、確かな確信をもってルリは歩いていく。

 それは長い間森の中の村で暮らしてきた経験によるものもあったが、それだけではない。

 ルリは魔女が住んでいる場所が


「……この家は」


 やがてルリは一軒の家にたどり着いた。

 木でできた簡素な家だ。独特なにおいがする。

 ルリは確信した。ここが魔女の家だと。


「……」


 会ってみたいという気持ちだけでここまで来てしまったが、本当に会っても大丈夫なのだろうか、ともルリは思う。

 それでも、ルリは魔法を使える魔女という存在にどうしても会ってみたかったのだ。

 ルリは扉の前に立って、ノックをしてみようかと思った。

 と、不意にルリは頭に何か冷たいものを押し当てられるのを感じた。


「……お前は誰だ」

「……!」

「動くんじゃない。死にたくないならな」


 後ろから声が聞こえてきた。声は若い。

 その声は怒りと警戒心に満ちているように感じる。

 ルリは動かないようにしながらゆっくりと答える。


「あ、あのぉ、私、ルリ・ラティスって言うんですけど……その、魔女に、会ってみたくて……」

「……ばかにしてる?」

「全くしてないよ!本当に会ってみたくてきただけ!」


 ルリの後ろにいる少女は舌打ちをする。

 冷たい何かが頭から離されたかと思うと、思いっきり背中を突き飛ばされた。


「ふげうっ」


 間抜けな声を出しながらルリは転がるように倒れ、そしてはじめて、その少女の顔を見た。


「興味だけでにどうやってたどり着いたか、言え。それとも望み通り、魔法を見せてあげようか?」


 黒いローブに水色の髪の毛。

 ルリとそれほど変わらなさそうな年齢の少女が鋭い目つきでルリを見下ろしていた。

 そして何よりその手に握られている不思議な形をしたそれを見て、ルリは確信する。


「……本物の、魔女、なんだ」


 その道具の名は銃。

 絵本の中の魔女が作り出したとされている、魔法の武器であった。

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