魔女と魔法と魔女狩りと

おかしな三人組

 さて、イルグレア王国を目指して東へ進むことにしたルリであったが、本格的に村の外へ出るのははじめてのことである。

 少し歩いただけでも木々の様子は違い、水の流れも違い、動物の気配も違う気がした。

 だが、問題はない。

 ルリには今まで長老やみんなから教わってきた知識がある。

 食べられる木の実やキノコもすぐ見つけられたし、魚も釣れる。

 村を出て早数日の夜、今は食事を終え野宿の準備をしているところだ。

 たき火でキノコを焼いて食べながら、この森がこのまま続くなら道中で食事に困ることはなさそうだけど、とルリは思った。


 そもそもルリにはいまひとつ国というものがぴんときていなかった。

 アルティ村よりもたくさん人が住んでおり、家もたくさんあるらしい。

 そして村ではほとんど使わないお金というものをたくさん使うらしい。

 今まで長老から教えられながらもらってきたものと、心の中で謝りながら長老の家から無事だったものを持ち出してきたが、実際どの程度必要なものなのだろうか。

 国に入るのにもお金が必要で門前払いされてしまったらどうしよう。

 ルリは想像の中でどんどん不安になっていった。

 その時。


「何者ですの!」

「ひえっ!!?」


 ルリはいきなり声をかけられて思わず飛び退いた。

 木の実を落としかけたがなんとかキャッチしてふうと息を整える。

 見ると、そこには銀髪の美しい少女が立っていた。

 年齢はルリと同じくらいだろうか。その後ろにまた変わった出で立ちの茶髪の少女が二人、銀髪の少女に敬うように立っていた。

 その三人に共通してやたらとひらひらした服はおおよそ森に似つかわしくなく、そのうえで銀髪の少女の不敵な笑顔がルリを覗き込んでくる。


「あらあらこーんな真夜中にこんな森でいったい何をなさっているのかしら?」

「え、あ、えっと、その……キノコ、焼いて食べてましたけど……」


 ルリは困惑しながらキノコを見てそう言った。

 するとその少女は不敵な笑みを崩してじだんだを踏む。


「そういうこと聞いてるんじゃないですわよッ!」

「お嬢様、差し出がましいようですが」


 お嬢様、とそう呼ばれた銀髪の少女は後ろの茶髪の二人組の方を振り向く。

 男性のような、しかしフリフリした服を着たその短髪の少女はそっとかしずきながら言う。


「彼女は"遺産"を持っているようには見えません。どこぞの田舎娘ではないかと思われます」

「そうですともぉ、あまりにも出で立ちが庶民すぎますわぁ。流石にこれが"魔女"ということはないかとぉ」


 もう一人の長髪の少女は銀髪の少女以上にフリフリとした服を着ておりふわふわした喋り方でそう続けた。

 ルリはなんだかすごく失礼なことを言われているような気がしたものの、彼女たちの雰囲気に圧倒されて何も言えなかった。


「……まあ確かにそうですわね!こんな無防備な魔女がいるわけありませんわよね!」


 そういうと銀髪の少女は高笑いをする。

 茶髪の少女達のほうも控えめにうふふと笑い始める。

 ルリはその様子を見て、なんとなくえへへと笑うのであった。

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