過去の夢
これは夢、ルリの夢。
ルリが心をいやすために見た、過去あった出来事の夢。
その日、ルリは村長の家に呼び出されていた。
母には大事な話になるだろうからしっかり聞いてきなさいとルリに念を押していた。
父はおかしげに笑ってそんな大げさなものじゃないさ、と言ってはいたがやはりルリは少し緊張していた。
家の前では三人の少女がその場におり、一人がルリを見るなり駆け寄ってきた。
「ルリ!おはよー!」
「おはよイスカ」
ルリは駆け寄ってくるイスカの両手を握り、二人は楽しげに笑う。
イスカはルリの一番の親友であった。
しっかり者で働き者、でも少しだけせっかちなイスカ。
ちょっとのんびり屋のルリとはタイプがだいぶ違ったが、不思議と仲がよかった。
「よ、ルリ」
「おはよパルマ、今日はちゃんと行くんだね」
「さすがに直々に呼び出された時は行かねえとうるせえだろ、普段はどうせ小言ばっかだしな」
そういってパルマは頭をかく。
パルマは少しがさつで男勝りな少女であったが、何か困った時があった時は率先してリーダーシップをとる正義感とリーダーシップを併せ持っていた。
「ルリ、パルマもお前には言われたくないんじゃないか。この調子じゃ今日も寝坊寸前だったのだろう」
「起きてたよ!ちょっと朝ごはん食べてただけで……!」
「そうだろうね、頬にジャムがついてるよ」
「んんうっ……カリンのいじわるー!」
「ふふ、おはようルリ」
乱暴にハンカチでルリの口元をぬぐったカリンは少しだけ口元を緩ませる。
カリンはクールで口数は少ないが、三人の前では優しい少女の顔を見せることも多かった。
ストイックに自分にできることを追い求め、実際になんでもできてしまうような少女だったが決してそれが鼻につくことはなかった。
「にしてもなんだろうな、俺たち四人に村長が話なんてよ」
「心当たりないよね私たちには、お説教常習犯のパルマと違って!」
「うるせえイスカ、ルリだってよく巨木の丘で寝すぎて怒られてんだろ」
「うぅー、それはだって、あそこで寝ると気持ちよくて……」
「やっぱりねぼすけルリだな」
「カリンー!」
4人はそう言いながら村長の家に向かっていく。
仲良しの幼馴染であったルリたち4人組はこの村で大事に育てられてきた。
イスカは常に元気に走り回っていて人の役に立っていた。
パルマはいたずらなどをしながらもいざという時は誰からも頼られ、それに応えてきた。
カリンは常に鍛錬を欠かさず動物狩りにも積極的に参加していた。
ルリはそんな3人を頼もしく思いつつ、自分はちゃんと村やみんなの役に立てているか、不安になる時もあった。
それでも3人は、ルリにはルリの強みがちゃんとあると笑って語り掛けてくれる。
ルリはみんなのことが大好きだった。
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