滅びた村で

 ルリが村の住民の埋葬を始めてから三日が経ち、ついに全員を埋葬することが出来た。

 せめて誰かの死体がと、そう何度も願った。

 だが、その願いは届かなかった。  

 全員だ。小さな村とはいえ、自分以外の全員が死んだ。

 家族も長老も友人も全員、一夜にしていなくなってしまった。

 それでも、ひとりひとりに挨拶をしたおかげかすべてが終わった頃には幾分かルリの心も落ち着いてきていた。


「……」


 ひとつだけわかったことがある。

 村のみんなは無抵抗に殺されたわけではなく、何者かを迎撃しようという意思があったように見えた。

 村を襲った何者かと戦っていたのだ。

 それがなんなのかはわからない。

 でもそれは確実にいた。

 そしてそれは、村を破壊し、皆を殺す以上のことをしていないようであった。

 つまり……この村はその何者かに意図的に滅ぼされたのだ。


「……これからどうすればいいのかな、みんな」


 だが、それよりもルリは当面どうやって生きていくかを考えなければならなかった。

 今は天気が安定しているからいいが、家はどれもほぼ崩壊しており雨風にいつまで耐えられるかわからない。

 備蓄していた食料も全てなくなった、畑ももう使い物にならない。

 この村で一人で暮らすのは無理がある。

 しかしルリは巨木の丘とこの村以外には殆ど外に出たことがなかった。

 結局なんの当てもなく、ルリはまた食料を探すついでに巨木の丘まで登ってきていた。


「……私が気付いていたら……何か変わっていたかな」


 つぶやきはしたが、ルリはすぐに首を振った。

 どう考えても何も変わるわけがなかった。

 それどころか自分も死んでいただけだろう。

 それでも、眠っている間に村の全員が死んでしまった事実がルリの心をちくちくと突いてくる。

 いつもの景色に、もう村はない。

 ルリはしばらく埋葬にかかりきりでろくに眠っていないことを思い出した。


 またここで寝るの、少しだけ怖いな。


 そう思いながらもルリの意識は深い眠りへと落ちていった。

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