残欠
ふとSNSで目にし、興味を持って調べた時のことだった。
それは日本刀を処分する際、法律に触れないように一定サイズ以下に切断して鉄くずもしくは残欠(ざんけつ)と呼ばれる形で売りに出される物の存在だった。
ふと、『これを包丁に加工し直して使ってみようではないか』そう思いたったのであった。
包丁と比べると厚いが鋼を使っているのだから加工して再利用出来ないわけがない。そう思っていた。
さっそく、フリーマーケットアプリで加工が楽そうな状態の良いものを探し、さっそく安く購入することができた。
出品者の手際もよく、数日するともう手元に届いていた。
打ち手の魂が籠っていると思っている私はその残欠を清め、包丁として蘇らせるべく金属用ヤスリでゴリゴリと手で削り始めた。
さすがに日本刀に使われている鋼だけあってしなやかさの中に硬さもあってなかなか削るスピードが上がらず手もすぐに疲れてしまっていた。
また明日続きをやろう。
そう思い、その日、私は眠りについたのであった。
ふと気付くと横になって寝ている私の背中に妙に生々しい感触があった。
女性特有ののふっくらとした胸の程よい感触がしっかりと背中に伝わり抱きつかれていたのを感じ、小声ではっきりは聞こえないが何かブツブツ言っていた。
男として特に悪い気はしなくて、害はなさそうだと感じたのでほおっておくことにした。
しかし、少しすると段々と抱きしめていく力が強くなっていき流石に息苦しくなってきた私は声をかけようと目を開けたその時だった。
横たわった女性の生首が目を見開いてこっちを向いていたのだ。
声も出ないほどビックリし、抱きついていた身体を振りほどき起き上がろうと布団に手をつくと、手にぐっしょりと濡れた感触が伝わり、血の匂いがした。
次第にハッキリしていく視界、よく見ると振りほどいた身体の主には首がなかった。
まさかと思い生首の方を見ると視線が合った次の瞬間、その生首は大きな声で怒りをあらわに叫んだ・・・
「なんで助けてくれなかったのあんなにお願いしたのに!!」
生首の後方からは袴と草履しか薄暗くて見えないが、明らかにいい身分で刀の先を引きずりながら近寄ってくる侍であろう人が近づいてくる。
パニックになった私は
「あぁぁぁぁっ!!」
と声をあげた。
そこでやっと叫びながら布団から飛び起き目を覚ますと汗びっしょりになっていた。
すると、膀胱がパンパンになり今までにないくらい限界な私がそこにいた。
この刀で切られた人がいたのか、おねしょしそうになってたのを知らせてくれようとしていたのか今でも定かではない。
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