星空に抱く
創造が、新しい世界をつくる。俺と輝夜は静かに山を登りついに山頂に着いて近くにある東屋で少し休憩を始めた。
「はぁ~・・・疲れた。」
「ホントねぇ~。星斗はだらしないね。私はまだピンピンしてるのに。」
「んな、ゴリラみたいな体力持ってるお前と一緒にすんなよ。」
「ふぅ~ん。」
「って、いててててててて!!」
「何か言うことは?」
「すっ!すいませんでした!!」
彼女の無言のアイアンクローによって俺はあの世とこの世の境界線の三途の川を渡りかけた。
夜はさらに更けていって私たちの周囲はさらに闇が包むように暗くなっていった。
「暗いね。」
「だな。」
「そう言えばさ、前もこんなことなかった?」
「・・・小学生の時か?」
「そうそう!!それでお父さんたちが・・・」
私たちは談笑を繰り返した。5年の空白を埋めるように少ない時間を使って関係を再び近づけていって・・・
「それで・・・中学になって。」
「・・・」
私の発した言葉が彼のことを少しだけだんまりとさせてしまった。しかし、その時だった。
「あっ!星斗!!上っ!」
「・・・へっ?ってあっ!!」
私たちが上を見上げると、そこには世界が移り変わったかのように闇に一筋・・・いや無数の閃光が空に弧を描きながら降り注いでいた。
まるで、5年前の日のように。
現実と言う世界から背いたのは神だった。
しかし、理想から背いたのが人間だ。
星々の基に人は毎度集う。
流れている星に願いを込めて
成就させようと深く深く望む。
「綺麗。」
「あぁ。」
2人の視界には満天の星空と流れ星が時間を支配して包んでいく。
「「・・・」」
「な、なぁ。」
「ね、ねぇ。」
話を切り出したくても話を切り出すことはできなかった。その時だけは出来なかった。赤面した横顔を2人じっと覗きながら機会を伺っていた。
「輝夜・・・好きだ。」
「・・・へっ?」
そして、星斗は何故か彼女のことを見ずにただ独りごとを呟くように想いを告げた。
そして、この日の気温は28℃で久しぶりの熱帯夜だった。
しかし、そんな暑さは温かさに変わった。
夢を見た。
輝夜と俺が同じ家で朝ご飯を食べているところを。
夢を見た。
私が星斗と同じ家に住んで愛を育んでいるのが。
現実は何処だろう。
私たちはまだ・・・そんな関係じゃない。
星が流れる。
同時に夢が流れる。
朝焼けに夕闇に夜中に
フラッシュバックする声とセミの音が、
私たちを赤い糸でぐるぐる巻きにしている。
目を瞑った。
そして、願いを手を合わせていった。
「輝夜・・・好きだ。」
この時は気が付かなかった。
この時の私は完全に思考がパンクしていた。
星々は私たちに数奇な物語を見せてくれる。
それどうやら終幕に動いているようだ。
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