モノクロの声
その日の夜は少しだけ暑かった。俺の鼓動も同じ・・・いやそれ以上に高鳴り続けて暑く感じた。
「・・・やった。」
1人帰路に立った時に俺、夜伽星斗は小さく握りこぶしを一つ強く握った。
「ふふっ!やった。誘われた!・・・誘われたんだっ!私!星斗に。」
家に帰って、ご飯を食べて、風呂に入って出て、タオルケットにくるまってバタバタと足を震わせながら部屋の中でずっと騒いでいた。
「う~ん・・・姉ちゃんうるさいよ!」
「あっ・・・ごめんねっ!」
「・・・まぁ良いけど。どうせ、星斗兄ちゃんにデートでも誘われたんでしょ?」
私は、突然隣の部屋にいる弟に説教をくらって挙句、私が喜んでいた理由を当てられてめっちゃ恥ずかしくなって叫びながら部屋を出ていった。
「はぁ~。・・・ヘタレどもめ。何で俺と祭が付き合ってることも気づいてないしさ・・・」
時間が少し経って、約束の日を迎えた。集合する1時間前、私は少しだけ過去の思い出に耽っていた。ほんの5年前のこの日私たちが流星群を一緒に見た時のことだった。
「ねぇねぇ!星斗!早く早く!!終わっちゃう!」
「ちょちょっ!?輝夜っ、待って!!」
慌てて私たちは山を駆けのぼる。時間が少しだけ悠久に感じていた。
「「はぁ・・・はぁ~。・・・あっ!!」」
私たちが登って山頂に着いたとき、幻想的に映る空がいつもよりも輝いてそして儚さを纏って星空は私たちのことを迎えていた。
「ね?星斗!!急いだほうが正解だったでしょ!」
「うん!そうだねっ!」
「・・・」
「・・・」
沈黙が訪れた。
その時の声は突如、途切れ途切れになって声が声でなくなり始め気が付けば原形を留めていない化け物のような声が錬成されていく。
そして時間がタイムラプス動画を感じさせるように秒針が事細かく中学時代をそして恋と言う感情が分かった時の過去が流れていくように脳内で再生されて行っている。
しかも、すべてがモノクロで色褪せない・・・いや、色褪せてしまっている。それとも・・・
考察が思考が現実が妄想が理想が創造が恋情が喜の感情が刹那、すべてを飽和して。
私の現在にすべて吸い込まれて行って・・・声も顔も姿も鮮やかに染まり色彩が取り戻された。
モノクロの景色と色彩豊かに広がる鮮やかな景色。
私は、静かに家のドアを開けて集合場所の広場に駆け足で向かう。それは、何のためとかではない。ただ本能に従って彼に会いたいっていう本心で・・・伝えたいことがあって、
言いたいことがあるから、私は駆けた。これから止まっている・・・いや、少し休憩していた時間を動かすために・・・
伝えたい!好きだって気持ちを!
愛しく思う気持ちを!
溢れている君と一生添い遂げて支え合いたいっていう気持ちを!
欲望を!
そして、今まであったことも共有したい!!
その日の夜がくれたのは
たった一つ。
秘めた思いを
秘めていた手のひらにある命の声を
私と君が
恋をして、結ばれて・・・やがて結婚して・・・
子供が生まれて、子育てして、笑い合って
泣いて、抱き合って、反抗期に耐えて
孫ができて、老化を感じて!!
いつか笑顔であの世に逝く。
私は・・・・私は!!
「こんな、日常を・・・星斗と暮らしたいんだ。」
とても静かで
少し寒い
夜の月明り。
でも今それが、主人公に変わるときが来た。
想いと想いが重なって、
すれ違う感情が
交錯して
情景を写す。
満月が照らし
闇を払拭し
主役を見守る。
その空に光る星々が・・・
降り注ぐ。
過去のシナリオが、5年越しに新作を出す。
それが蒼い夜。
モノクロだった声は
再び鮮明になる。
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