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「おい、泰子、しっかりしろ!」
荒い息づかいの合間合間に、彼女は呟くように言った。
「彼……来ないの……なんか、私……フラれちゃったの……かな……」
そして、彼女の目から涙が流れると、そのまま彼女の体が重くなる。気を失ったのだ。
「お、おい、泰子、目を覚ませ!」
いくら揺さぶっても、彼女は目を開こうとしない。
くそ……どうしたらいいんだ……
救急車を呼ぶしかないか。駅前なら公衆電話がいくらでもある。
僕は無理矢理彼女をおんぶし、最寄りの電話ボックスに飛び込んだ。赤い緊急通報ボタンを押し、119番をプッシュする。
「あ、もしもし、急患一名、駅前の時計台で、意識が無い状態です……」
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市立病院に救急搬送された泰子には、肺炎の診断が下った。その前から風邪気味だったようだが、何時間も寒い場所にいて一気に悪化したらしい。非常に危険な状況だという。
一緒に救急車に乗って病院にやってきた僕は、それを彼女の家族に伝えなくてはならない。公衆電話にぶら下がっている電話帳で彼女の家の電話番号を調べた僕は、電話にテレホンカードを入れてその番号をプッシュする。
呼び出し音、1回目……2回目……3回目……
……。
ダメだ。留守みたいだ。
受話器を置いた僕は、今さらながら事の重大さに怯えていた。
僕があんな寒そうなコーディネートを選ばせたせいで、泰子が……死ぬ?
そんなことになってしまったら……僕は……
その時だった。
「吉田さん」
振り向くと、硬い表情の看護婦さんだった。
「足立さんが呼んでらっしゃいます。集中治療室に来て下さい」
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集中治療室で泰子は、点滴と酸素マスクを付けられて横たわっていた。
「泰子!」
僕が声を掛けると、彼女はうっすらと目を開いた。そして、右手で酸素マスクをずらす。
「いちろう……」声になっていない、ささやきだった。「うらなって……わたし……どうなるのか……」
「!」
「見ろ! 『大丈夫』って出てる! だから、お前は大丈夫だよ!」
涙をこらえて言いながら、僕はポケコンの画面を彼女に向ける。かすかに微笑み、彼女はポケコンに向かって震える右手を伸ばそうとする。
「あり……がと……」
次の瞬間。
彼女の手がだらりと落ちた。
「泰子……?」
がくりと顔を横に向け、目を閉じた泰子の反応は、ない。
「……泰子ぉ!」僕は絶叫する。
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