7

「お父さん、ご飯だよ」


 その声に、私は現実に引き戻される。振り返った私は凍り付いた。


「!」


 そこにいたのは、泰子だった。あの頃のままの。怪訝けげんな顔で彼女が口を開く。


「どうしたの?」


「あ、ああ……すまん」


 ようやく私は我に返る。それは娘の詩織だった。そうか。詩織もあの頃の泰子と同じ年になったんだった。


「もう。すぐに来ないと、お母さんと一緒に先に食べちゃうからね」


 詩織はくるりと後ろを向いて歩き出す。


「ああ、分かった」


 私はポケコンを手にして、そそくさと詩織の後を追った。


 なんだか後ろ姿も随分泰子に似てきたような気がする。それはそうだろう。


 だって詩織は、泰子の実の娘なのだから。


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