3
「ねえ一郎!」
次の日の放課後。泰子はゴキゲンだった。
「なんだよ」
「すごいよ、あの占い大当たり! 昨日めちゃくちゃいいことがあったの!」
目を輝かせて、彼女が言う。
「へぇ」
驚いた。僕のプログラムにそんな御利益があったとは。
「それでさ一郎、そのコンピュータ、相性占いみたいなこともできるの?」
「……!」
ドキリとする。顔が熱い。
「あ、ああ、多分、出来ると思う」
「そしたら、近いうちに占わせて!」
「ああ、わかった」
「それじゃ、よろしくね!」
そう言って踵を返そうとした彼女を、僕は呼び止める。
「あ、泰子!」
「なあに?」足を止め、彼女は首から上だけを僕に向けた。
「いいことって、何があったの?」
「うふふ」彼女はニヤリとする。「ひ、み、つ」
「……あ、そう」呆れ顔で、僕は応える。
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相性占いのプログラムもすぐに出来た。もちろん、彼女が自分と僕の名前を入れたときは、相性は 100% 、と表示されるようにするのも忘れなかった。
放課後、僕は帰り仕度をしている泰子を手招きした。
「相性占い、出来たよ。最初に自分の名前を入れてENTERしたら、次に相手の名前を入れてみて」
僕は泰子にポケコンを差し出す。
「ありがとー!」
早速彼女は何やら文字を打ち込んでいたようだった。
「……85パーセントか……まあまあね」
「!」
愕然とする。彼女が僕の名前を入力したのであれば、100パーセントのはず……
いや、きっと打ち間違いだ。だけど……吉田を YOSHIDA としても YOSIDA としても、一郎を ICHIROU にしても ITIROU にしても 100% になるはずなのだが……
「またいろいろ占わせてもらうね! 一郎、ありがとう!」
そう言ってポケコンを僕に返した彼女は、教室を飛び出す。
……。
本当は、こんなことしちゃいけない。
だけど……気になる。
いったい彼女は、誰の名前を入れたのか。
逡巡したが、結局僕は彼女の相手の名前が入力された変数の中身を見てしまった。
MATSUZAKI TAKERU
……。
誰だ……? そんな名前の男子生徒は僕のクラスにはいないし、僕の知る限り他のクラスもいないと思うんだが……
でも、間違いなく言えるのは……
彼女が自分との相性を知りたかったのは、僕じゃなかった、ってことだ。
その事実に、僕は打ちのめされていた。
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