第2話 家
……?何故俺は家に居るんだ?
ふと気が付くと俺は家のリビングにいた。
もう数年この家には帰っていない。それに俺は殺されたはず……。
海外にいた奴らまで殴りに行った後に家に帰ろうとしたら警察に捕まったからだ。それでその後に殺された。
俺が家族と住んでいた一軒家があるのは千葉県にある街から少し離れた田舎だ。田舎と言っても新幹線が通る駅はあるので都会には割とすぐに行くことが出来る。なので家族が全員いる時もいなくなった時も足として使っていた。
「あいつらは殺したくせに。俺は殴っただけだろう」
そうだ、悪いのはあのクソ共だ。人の家族を殺しといて反省など全くしていない。殺して無いだけまだ俺の方がマシだろう?
復讐の旅をしていると自ずと身につく事はあった。視線誘導や暗殺の仕方などだ。ボコボコに殴っただけで殺してはいないがそれを身につけていなかったら復讐の途中で捕まって殺されていただろう。
そんな事を思いながら部屋を見渡す。
埃が部屋を覆っている。父がジョギングに出かける際に持って行っていた水筒やタオルが見えた。
母が見ていた栄養のあるご飯のレシピが乗っていた本。
兄がバイトを頑張っていた証の通帳。
妹が大切に持っていた家族の写真。
それを眺めているだけで涙が出そうになった。
「どうせ殺されるなら全員殺しておけば良かった」
それが今の気持ちだった。どうせ死ぬなら家族を殺したクソ共にも最悪の死を与えるべきだったと後悔していた。
全員の部屋を見に行こうと廊下へ出るために扉を開けて出ようとした。しかし、俺の手はドアノブに当たる事はなかった。
「ッ、なんで透過するんだ?」
そう思い自分の身体を見た、そしてそこで理解した。
自分は確かに死に、幽霊となってここに戻ってきたんだ……と。
身体の色は薄くなり、その先にある物が見えていた。そして壁に向かって歩いても当たる事はなく通り過ぎた。
「もしかして皆居るんじゃないか!?」
ふと頭に浮かんだのはそんな希望だった。もしかすると自分以外の家族は幽霊として先に戻って来ていたんじゃないかと……。
すぐさま身体が壁を通り抜ける事を利用して家の隅々を見て回った。
しかし、見えたのは埃だらけになった家具や衣服などだけで家族の幽霊はいなかった。
「あ、そうか……四十九日か……」
もしかすると全員来ていたのかもしれない、気が付く事は出来なかったが殺された後の49日は家に居てくれたのかもしれない。と、そんな確認のしようがない事を思った。
「俺も49日間だけはまだここに居られるのか」
案外長いようで短いその期間のだけしか居ることが出来ないとするとやる事は1つだった。
それは、『全ての物を見て思い出せる記憶を懐かしむ事』だ。
物は必死に掴もうとしたが手がすり抜けるだけで何も出来なかった。
「あぁ、この頃が一番幸せだった」
妹が大切に持っていた家族写真を眺めこの家に来たばかりの時の事を思い出していた。
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