第17話 学校からの電話と・・・
俺が家に帰り、親父が帰ってくると手合わせを頼んだ。
弱った心を叩きのめす為と憂さ晴らしの為、そして今日こそは親父に勝ってボコボコにしてやろうと思ったからだ。
結果、ボコボコにされたのは俺だったが・・・
さすがに、まだまだ親父の壁は厚かった・・・
まあとにかく、立つのもやっとになるくらいまでスパーをやったおかげで大分スッキリした。
そして、風呂で汗を流してベッドに横になりながらスマホを確認すると・・・
『今日“花鳥風月”に行ったら
『
『翼さんから
と、翼と圭と小鳥遊さんからメッセージが来ていた。
ちなみに、翼と圭とは学校祭の時に連絡先を交換している。
俺からの返事が無いことに焦った翼が小鳥遊さんへメッセージ送ったという事がわかり、翼がメッセージを送ってきた時間を確認すると2時間ほど経っていた。
元々、俺と連絡取る人は少なかったため、携帯を確認するという習慣がほとんどない。
だから家に帰ってきてからは、スマホの画面すら一切見る事もなく全く気にもしていなかった。
そのせいで、翼を不安にさせたのは申し訳なく感じた。
ただ、こうして皆が心配してくれるのは今までなかった事で、本当に有難いし嬉しいものなんだなと感じる。
そう思いながらも、翼と圭、小鳥遊さんに心配させた事に対する謝罪と、心配してくれた事への感謝のメッセージを送った所で寝落ちしてしまった・・・
翌日。
俺は色んな意味で余程疲れていた為か、昼まで寝てしまっていた。
そして何気にスマホに手を伸ばし画面を開くと、不在着信とメッセージの件数が増えていた。
それはやはり、坂上と学校からであった。
俺は坂上に対しては、ほとんど信用をなくしているのでめんどくさいなと思っていた。
学校からの電話の用件も何なのかはわからないが、俺の携帯に電話が来る事情として俺の家は両親共働きで平日は学校からの電話はほとんど出られない。
だから、余程の緊急でない限りは学校から直接親の所に連絡をする事はない。
その代わり、俺の携帯番号を教えているので自宅にかけても出ない場合は、俺の携帯にかけてくる事になってしまっている。
だからといって、何でこんなに電話が来てるんだ?
こちらから折り返すのも何だし・・・
どうしようかと悩みながらスマホの画面を操作していると、再び着信が鳴る。
それは今、丁度考えていた学校からだった。
はあ、全く・・・
学校が俺に何の用事だよ・・・
と思いながらも、流石に学校からの着信を無視し続けるわけにはいかないと思って電話に出る。
「はい、もしもし・・・」
『あっ、ようやく出た!・・・風見くん?』
「はい、そうですけど」
『私、担任の後藤ですけど・・・』
担任だと言うのは、声を聞けばわかるけど・・・
それよりも、一体何の用だと言うんだろう?
「はい、どうかされましたか?」
『え~とね・・・まず先に、単刀直入に伝えるけど・・・』
何か問題でもあったのか?
と思いながらも、担任の次の言葉を黙って待つ。
『風見くんの停学処分は取り消しになったから』
「・・・・・はっ?」
・・・先生は何を言っているんだ?
言っている意味が理解できない・・・
「おっしゃっている意味が全くわかりませんが・・・」
『だから風見くんは停学じゃなくなったから、学校に来て良いって事よ』
「はあ・・・未だに理解は出来ませんが・・・それは、どういう経緯でそうなったんですか?」
『えっとね・・・昨日、風見くんが停学処分を受けて家に帰った後、それを知った杉並さんと結城さん、それと坂上くんの3人が噂はデタラメだと直訴しにきた上に、それとは別に堺くんも風見くんが噂のような事をするはずがないと擁護しにきたのよ』
・・・・・
なぜ杉並と結城が、俺を庇う必要がある?
この2人が噂を流したと思っていたのは違ったという事か?
でも、そうだとしても・・・
別に俺が停学になろうがならなかろうが、2人にとってはどうでもいい事じゃないか。
全く意味がわからない・・・
坂上もいたという事は、何かしらの入れ知恵をした可能性も否定は出来ないだろう。
そして堺も、俺の事なんて大して知らないはずなのに、あの1件だけでどうしてそこまで俺を擁護しようと思ったんだ?
とはいえ、今考えても何もわからないため、それは横においておく。
『それで、今回の被害者とされていた2人から被害は受けていないと言われ、風見くんの不当な停学を取り消してほしいと訴えかけられたの。そこで職員会議を開いて、貴方の停学処分はなかったという事になったのよ』
「はあ、そうですか・・・」
『そうですかって・・・まあ、とにかく・・・そういうわけで、本当は今日から来ても良かったのだけれど連絡がつかなかったし、今日はもうすでに遅いから明日からは普通に学校にいらっしゃい』
「・・・・・」
はあ、全く・・・
どいつもこいつも、勝手な事ばっかり・・・
「恐れ入りますが、僕は彼女達を突き倒して怪我をさせたのですよ?」
『それは・・・あの子達から事情を聞いています。飛んできた野球ボールから守るためだったと』
・・・あの時、俺の話を碌に聞かず嘘だと断定したあいつらが、なんで急にそんな事を?
どこでそれを知った?
まあ、そんな事はどうでもいいや。
「彼女達がどんな理由でそんな事を言ったのかは知りませんが、なんにせよ僕は彼女達に怪我をさせた。だから僕自身の意志で納得して停学を受け入れたんです。なので、僕は当初の予定通り2週間の謹慎を終えてから学校に行きます」
『なんでそこまで頑なに・・・と、とにかく明日は学校にいらっしゃいね』
「・・・逆に聞きますけど、どうしてそこまで僕が学校に行かなければならないんですか?」
『それは・・・冤罪で不当な処分を受けた生徒をそのままにしておくわけにはいかないでしょう?」
「不当・・・不当ね・・・」
『な、なんですか?』
あの時、あの場で俺を擁護してくれる者は誰1人としていなかった。
であれば、俺にとっては不当でも周りからしてみれば正当であるという事。
逆に言えば、俺にとって正当な事でも周りが不当だといえば不当になる。
そこには真実や俺の証言など関係ない。
大勢の人間が言う事が、真実よりも正しい事実となる。
なにせ、数の暴力には誰も敵わないのだから・・・
それは中学の時に、嫌というほど経験してきた。
だからこそ俺はそれを受け入れ、先生にもそう証言した。
どうせ俺1人が違うと言っても、信じてもらえないのだから・・・
それなのに、俺の意見がない所で今回の件が不当だからと決定が覆されるのであれば・・・
どんな理由だろうと処遇を受け入れて納得した俺にとっては、罰を受ける事こそが正当であり、覆される事・・それこそがまた不当になる。
それを誰もわかっていない。
何よりも、俺が何を望んでいるのか知らずに周りが手前勝手な事を押し付けるのであれば、俺も自分勝手にさせてもらう。
「いえ、何でもありません。それよりも学校側がどのような判断を下したとしても、僕は最初の処遇を受け入れたので僕自身はそれを覆す事はありません・・・何よりも、これ以上周りに振り回されるのはご免ですから」
『えっ?か、風見くん!?何を言って・・・』
「ですから、僕が欠席する2週間を停学扱いにするのか無断欠席扱いにするのかは、先生方の裁量に任せますのでお好きなようにお願いします・・・では、失礼します」
『えっ?あっ!ちょっと、かざ・・・プープープー』
先生が何かを言っている途中で俺は電話を切った。
どうせあれ以上話していた所で、俺を説得しようとするのがわかっている。
先生にも言ったように、振り回されるのはご免だ。
何よりも、辞めてもいいとまで思っている俺が、停学を撤回してまで学校に行く意味など全くないし。
だから俺は意見を覆す気はない。
それなのに、無駄な説得をしようとする相手と話をするだけ時間の無駄である。
そんな事を思いながら、スマホをベッドに放り投げようとした瞬間。
再び着信が鳴った。
また学校か?
しつこいな・・・
そう思ってスマホの画面を見ると、表示されていた名前は坂上だった。
どうしようかと悩みつつ、スマホを放り投げた後なら無視していたのは間違いないが、今は丁度手に持ってしまっている。
はあ・・・と溜息を吐きながら、電話に出る事にした。
「・・・はい」
『あっ!
坂上から着信には気づかなかったせいもあるが、1度も出なかったからか坂上の声からは安堵の様子が伺える。
「・・・何の用だよ?」
『何の用って・・・それよりも、何で俺の電話に出てくれなかったんだ?』
坂上が俺の出られないタイミングで電話してきただけだろう。
しかも、坂上に対しての感情が下がっている今となっては、むしろ何で俺が坂上の電話に出ないといけないんだよ・・・
そうは思いつつも、適当に答える。
「・・・そんなの、寝てたりバイトしてたりしてたからだよ」
『今の状況でバイトって・・・い、いや、それよりも俺がシカトされたわけではなかったんだな・・・』
まあ、正確にはバイトせずに帰ったけど、そこまで坂上に言う必要はない。
それに本当なら、お前の言うようにシカトしたかったよ。
「そんな事よりも、結局は何の用事なんだ?」
『あ、ああ、余計な事をすまん・・・単刀直入に言うと、お前の停学が取り消されたんだよ!』
「ああ、その事か・・・さっき後藤先生から聞いたよ」
『そ、そうか!伝わってたのか、よかった!・・・じゃあ、明日から来るんだよな?』
「いや、行かないよ」
『は!?何でだよ・・・』
「俺には俺の思う所があるからさ・・・停学を覆してまで行く意味もないし」
『ちょ、え、何だよそれ・・・どういう・・・』
坂上が理由を聞きたそうにしているが、俺にはそこまで言う必要はないし、今はそれ以上に坂上に確認したい事があるため言葉を遮る。
「なあ、坂上。そんな事よりも、俺も聞きたい事があるんだよ」
『えっ?な、何をだ?』
「緑川・・・」
『――っ!!』
俺が緑川の名前を出した瞬間、坂上は息を呑んだのが電話越しでもわかった。
「やっぱりお前は・・・あいつとは知り合いだったんだな?」
『な、何でそれを・・・』
「それはいつからだ?」
『・・・中学の時、俺が通っていた学習塾に彼女が通い始めて知り合ったんだ』
俺が坂上の質問に答える気がないと感じたのか、俺の質問に素直に答える。
「そうか・・・最初からずっと・・・あいつから俺の過去を聞いて、嘲笑っていたのか?」
『そ、それは違う!!絶対にそんな事はない!』
「じゃあ、俺に近づく事で何をしようとしていたんだ?」
『何かをしようとなんて・・・い、いや・・・わ、わかった・・・ちゃんと話す・・・だけど、電話で話すような内容じゃないし、どこかで会って話せないか?』
正直めんどくさいとは思うが、一応真相を聞いておきたいという気持ちも少なからずあった。
なので・・・
「わかった・・・」
と、坂上と会う事を告げたのであった・・・
―――――――――――――――
あとがき
お読み頂きありがとうございます!
まさか他の作品ではなくて、この作品で一時とはいえジャンル別日間ランキングに入れるとは思いませんでした。
本当に沢山の応援等ありがとうございます!
あるご意見を頂いた事により、色々と感じる方もいる事は重々承知しておりますが、このままの展開で書き進めさせて頂きます。
今後少しずつ状況が変化していく予定ですので、これからもよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます