空き缶

@mi423

空き缶

ひとりぼっちの空き缶は

からからからから旅をする

袋がカラスに啄まれ

お外に放り出されたようだ

いつのまにやら道を転がり

からからするするたびをする

メガロポリスをからころり

金のラベルをひからせて

からころからころ旅をする


ひとりぼっちの空き缶は

ある時子供と出会ってさ

僕ら友達言い合った

みんなと一緒にからころり

缶蹴りやって遊ぼうか

友達想いの空き缶は

蹴られてみんなと笑い合う

ぼくはみんなと遊べたのかな

ちょっと身体は痛むけど

みんなの笑顔 楽しそう

だけどもちょっとおかしいな

どうもじんじん痛むのは

この身だけではないようだ

どうやらここにはいられない

いつかまた会うその日まで

さよならばいばいまたいつか

ひとりのあきかんからころり


ひとりぼっちの空き缶は

そのうちうみへたどりつき

母なる大地へ別れを告げて

こんどはぷかぷかたびをする

幾度も超える夜の海

ぼんやりよぞらをみあげれば

僕が出会うは世界を紡ぐ

それは大きな絵巻物

あれはオリオン、アルゴ船

ふんわり輝く六連星

億千光年思いを馳せて

心を抱えてどんぶらこ

けれどもなんだか悲しくなって

胸を抑えてどんぶらこ

老いたる星よ、ベテルギウス

お前はなにを思うだろう

私はなにを思えばいい

そのうち嵐がやってきた

なんだか涙が止まらない

びゅーびゅー、ざーざー、どんぶらこ


ひとりぼっちの空き缶は、

そのうちどこかにたどりつき

異国の土地を旅をする

だあれのめにもとまらずに

からからからからたびをする

ラベルもはげてしまったさ

さびたからだでたびをする

僕ってどんな色だっけ

道ゆく人に尋ねてみても

どこにも答えはありゃしない

どうやら穴があいたみたいだ

これではうまくころがれない

それでもぼくは進みたい

ここからどこかに変わりたい

きりきりからから旅をする

これでもぼくは旅をする


ラベルの禿げた空き缶は

色んなことを見て知った

愛するものをたくさん見つけ

自分のことを知っていく

禿げてしまった自分のラベルも

自分で描いてしまおうか

ひとりの空き缶からころり


ひとりで転がる空き缶は

砂漠をさらさら旅をする

吹き付ける風を身で切って

ひゅーひゅーからから夜を渡る

砂丘のてっぺん登った空き缶

ぼんやり空を眺めては

自分のことを考える

昔のことを考える

きっとぼくは

ぼくは優しくなんかない

誰かに受け入れられたかっただけだ

僕とみんなは別々だ

みんなに僕は解りはしない

だからせめて蹴られたって

僕はみんなと遊びたかった

みんなに愛されたかっただけだ

僕は僕を偽って

僕はみんなを欺いて

勝手に去っていただけだ

僕は優しくなんかない

僕は愛されたくはない

僕は愛されなんかない

そんなの僕は信じない

信じることはできやしない

赤く大きな恒星よ

とても長い時間の中で

お前は何を見てきたの

億千光年彼方の距離も

伸ばした腕なら届くだろうか

一人の空き缶からころり


僕は君とお話ししながら

自分を偽る僕を知る

僕が嫌っているものは

あなたじゃなくて僕なのだ

君と一緒にいるために

自分を偽らねばならない

そんな自分は許せない

せめて自分に嘘はつかずに

心を許して生きていたい

一人に浸って生きていたい

自分が吐いた言葉全てが

一言一句許せない

僕は自分を欺いて

君はそれすら知りはしない

君を騙してごめんなさい

あんたは僕を許さずに

嫌ってくれればそれでいい

君はホントを知るべきだ

あんたは僕といれやしない

どうやら僕は去らねばならない

僕はあんたといれやしない


帰り道

広すぎる空が落ちてきそうで怖くなった

北極星はどれだっけ?

昔はすぐにみつけれた

どの星が僕を導くの

今の僕にはわからない

けれども僕を導く星は

僕のこの中に燃え盛る

ほしを生み出してやりましょう

誰のためでもありません

ぼくを生み出してやりましょう


そのうち旅した空き缶は

世界の誰にも負けないくらい

多くの国を見てきたさ

いこくのさばくにぼくはひとり

きれいな夜空にひとりだけ

あなぼこだらけのあきかんは

たったひとりで埋もれてく

なみだをながした空き缶は

えがおをたたえて埋もれてく

とおいとおいみらいのひとは

ぼくをみつけてくれるかな

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