にわか雨

台所のトレー

プラスチックのまな板

風呂場のタイル

散らばったコピー紙

リビングのカーテン

ベランダ

洗濯機

向かいのマンション

傘をさす人

曇り空

一面が橙に染まって

日常が一歩道を外れた

僕は食器を洗いながら

その様を眺める

この橙が明日まで続くなら

何か変わるかもしれないと

淡い期待を天上に抱く

しかし見ろ

世界は段々と赤みを増して

彩度を失い

変わらぬ夜の訪れを告げている

僕は手を止めてベランダに出る

あの橙は既にこと切れ

薄紅色した空だけが

向こうの山に寄り添っていた

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