ロータリーにて

裸眼で眺める町の風景はボヤけていて

街灯やテールランプは

星雲のように輪郭を失い

駅前に並んだ街灯の明かりは

中止になった夏祭りの相似形

終電を逃さぬよう

足早に去っていった今年の夏は

思いでの一つも

置いていってはくれなかった


行き交う人々の顔も

店先の看板に記されたメニューも

向こう側で停車しているバスの行き先も

何一つはっきりとは見えませんでしたが

液晶の光が染み付いたレンズを下ろして

裸眼で眺める町の風景は

たいそう綺麗なものでした

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