第3話
高い身長と、短い髪。
服装もシンプルなデニムパンツにシャツ。
今すぐに歌劇団の男役が出来るねとクラスメートに散々からかわれているのだ。
小さい子から見たら、完全に男に見えるのだろう。
やっぱり、こんな自分が「魔女」を名乗るなんて、おこがましいのだろうか。
店に置いてある売物の鏡に映した自分の顔を見ながら、依音はため息をついた。
そういえば、少し前にやってきた女子中学生のことを思い出した。
先ほどの小学生の女の子のように、依音のことを男だと思って告白してきたのだ。
彼女にもらったラブレターの返事をしていない。
あれからあの子は店に来ていないはずだ。
次に来るようなことがあればはっきりさせた方が良いのだろうか。
それとも、このまま男を演じた方がいいのだろうか。
変に期待を持たせるより、すっぱりと打ち明ける方が相手にとっても自分にとってもいいのだろう。
しかし、落胆した顔を見るのも怖いのだ。
見た目は男らしい依音も、中身はやはり高校生の女の子であり、どちからといえば繊細な方だ。
その時、依音はハッとひらめいた。
覚えたばかりのタロット占いをしてみたらどうだろうか。
迷ったとき、困ったときのタロット。
それがいい。
そう思った依音は、早速カードをケースから取り出した。
店のカウンターにカードを広げてシャッフルする。
慣れない手つきでゆっくりとかき混ぜ、時計回りに何度も何度も動かしていく。
納得いくまでシャッフルし、依音はカードを整えた。
その束を三つに分け、そして順番を変えて重ね合わせる。
そして、再び一つの束になったカードをカウンターの上に置いた。
喉をゴクリと鳴らし、依音はカードを見つめて横一列にスライドさせて並べた。
七十八枚の中から一枚だけを拾い上げて占う「ワンオラクル」を試すのだ。
すーっと息を吸い、そしてゆっくりと吐く。
深呼吸をし、精神を整えた依音は心の中で念じてカードを一枚抜いた。
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