あったかい色の夢・熱く苦しい色の夢
「おや。おやあ?」
「こんなにヒビ、あったかあ?」
首に
「お父さん! お父さん!!」
「ハッハッハッ。なんだ母さん。ここの空気、吸い尽くすのか?」
「そうじゃなくて!
バンッ!! 突然、お
「お父さん!
「……。母さん。支度をしてくれ」
「俺は
「
ブツッと、お
「サテ、困りマシタ」
今は人がちらほら歩いている。車も走っている。これでは出て行けない。
公園への方向の信号が赤になった時。一台の車が止まった。
「あれハ……」
その車のドアには〝
「ああ! また赤」
まるで邪魔されているように感じてしまいそうだった。
「落ち着いて、母さん。ん?」
「屋根に何か落ちたかな? 音はしなかったがなあ」
窓を開け、身を乗り出して屋根を確認する
「青よ! お父さん、早く!」
走り出す車。の下に……
これなら見つかりにくい。グッジョブ、
「
「それが、スマホに何度かけても留守電なんだ。声は入れておいたけど」
「私たちだけでも急ぎましょう!」
(あれ、母さん? 父さんも。若いなあ……)
目を開けた
甘いなつかしい匂い。記憶の片隅に、そっと置いてある
そして頬に、とても柔らかく感じる温もり。
(この手、おれ?
「この子は、神様から預かった子ね。私たちの所に来てくれたんだ……」
「ああ。そうだね。きっと、強い子に育ってくれるよ」
「ねえ。
「大丈夫だよ
(なに言ってるんだよ。父さん……母さん……。神様から預かったって。おれ、父さんと母さんから、生まれて来たんじゃないの? 行かなきゃって、なに?)
頬を撫でる
(あっちぃ。え! 火事?)
あたり一面が火の海だ。どこかの建物の中? いくつもの太い柱が燃え、所々上から火の塊が落ちてくる。渦を巻いている炎だらけだ。
真っ赤な炎が取り囲んでいるのは、傷ついた
横たわった
彼らは負けている。いや、負けてしまった。
そして彼らをかばうように立っている、
直感でわかった
(
「やめろ兄さん! やめろ!」
(なに言ってんだ !? おれ !!)
それは、紫色。
紫色が
そしてそれは、
「んがっ!」
自分の変な声で
「あれ? 夢、か。昼寝しちった……。んがっ!」
しっかり目覚めた壱の目と鼻の先に、眠っているお姫様の顔がありましたとさ。
めでたし、めでたし。
(近い! 近いぞ
お互い横になって、顔と顔の間は30センチくらいか。もっと近いかも。
じっと
(キレイだな。ちょっと触ってみたい)
じっと
(カワイイな。ずっと見ていたい)
じっと
(タマラン。いっぺん、お願いしたい)
何を?
「うーん」
起きそうな
「ぅヲい!」
すっとんきょうな声を上げて、あわてて芝生に突っ伏す
「
突っ伏したまま足をバタバタ。
「バタ足の練習……」
「熱心ね。
前髪が揺れている。
二人は空を見上げる。
空が、回っている。桂の木を中心にして、その真上の雲がうずを巻いていた。
「
「
「それに、ここから出られないんだよ!」
不安を隠せない
「これって、もしかして」
思いっきり前髪が揺れている
『
もしかしなくても、だ。空が、紫色になった。
その色が降りてくる。まるで、世界を覆うように。
「いない……。ここにいるはずなのに」
だが二人は感じとっていた。
「ここの空気はおかしい。何かが違う」
「
「え?」
声に振り返る。そこには人体模型が立っていた。
「え? え? えー! 何これ? いつの間に? しゃべった?」
おどろく
「はじめマシテ。
自己紹介が終わると、模型の表面にヒビが入ってはがれ落ちる。
「君が
「まさか人体模型の中にいたとは。
「
「ワタシからカモカモ先生にハ伝えテおきマシタ。もう来テるハズなんデスけど」
「今、
「ハイ。ワタシには見えマス。
「
「なんてこった。俺達に見えないなんて」
「ワタシは向コウ側に行ケますガこの
「私達が協力すれば良いのね?」
「はい。お願イいたしマス」
「わかった。向こうに行ったらこれを
「きっと、
そして三人声をそろえ、小さな声で神様に申し上げる。
「
「
「
「
「
「
「それデハ、行ってマイリます」
「頼むよ。
「必ズ連れテ戻っテ来マス。
二人に背をむけて、
「お願いよ、
振り返って
「変。
そもそも四人だけで見つけるには、この公園は広すぎた。芝生の面積だけでもかなりある。
どうする、
「みんな。一緒にいよう。この色は、あいつの
「こっちも
「えと。盛り塩と。
「ここ、芝生よ。描けないかも」
「あらら。じゃ、じゃあ盛り塩を置こう」
そう言って四つ、芝生の上に置く櫻子。コロリン。盛り塩が転がる。芝生では不安定だった。
「ま、まかせて! 塩を砕いて円を描くわ。効果はあるから!」
「……」
「……」
「……」
「……風で飛んでっちゃうね……。さ、
全然、大丈夫ではない
「ええええーと。おれは桃の木で作ったお
ウエストバッグから取り出す
そして
お
「桃のお
三人にお
「あとはお
「
叫ぶ
(いたいた。こいつだ。こいつらだ)
鬼が喋る。嫌な声。
みんなで桃のお
「うわ、押し返される。これ、力くらべだ」
いくつもの鬼が四人を取り囲んでくる。ものすごい数で、無理矢理にでも押し破るつもりだ。みんなが持つ桃のお
「
「もう一つ!」
もう一枚、
「
「
こちらは
「キリがない!」
壱が
「ぼくがいくよ!」
立ち上がる
「うん!」
唇を噛みしめて、
「
「うん! ん!!(わたしも連れてけ!!)」
グイグイ引っ張る。
「……。
『行っけええ!!』
二人の声が、
「いいな。二人で」
「ここここっちは出来ることをやろう!」
がんばれ
ゴロゴロゴロッ。うずを巻いた雲の中心から、雷鳴が轟いた。
ドンッ!! 辺り一面、真っ白に。
轟音とともに稲妻が
「うわあああ!」
「きゃあああ!」
電撃が痛みとともに二人の
「
「
稲妻は終わらない。しつこく、
「クッソおおお!!」
歯を食いしばる
すると、電撃の光は
「思い知れえええ!」
だが。
「やった……。
駆け寄る
「
「
「これで、
「
「Yes, あなたがいるもの
「OK, ゼッッッタイ、次も来る! 気を抜かないで。OK ……。(ごめん)」
「おれと一緒に闘ってくれ。さくら——」
ドッカン。芝生がめくれ上がった。盛り上がる土の塊。その中から、大きな鬼が2匹、出た。
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