東雲色の鎮守・白い牙・黒い爪
次の日のよく晴れた、暖かい夜明け前。
日の出は近い。
狼ノ
入り口の
眠い目をこすりながら、
「今朝もゴミが少なくて良かったわね。
「眠たいッス」
「
「眠たいッス」
「もう明るくなってきたなあ」
「暖かくて良かったわ。四月はお日様の昇りも早くなったわね」
「眠たいッス」
太陽が昇ってきた。辺りが光に満ちてくる。
「おーい
「お早うございます。おじさん」
「お早うございます」
「やあお早う。二人とも、
「眠たいッス」
誰か上って来る。
日の光にキラキラする髪。
「うっっそーーん!」
もちろん両親には話しは通してある。
しかし。
急に来られるとどうして良いかわからない。
「
二人が駆け寄って行った。
「どどどどうして今? ここに?」
あせる
「一度、お参りしなきゃと思って来ただけよ。こっそりのつもりだったけど、まさかみんながいるなんて」
「こんな早くから
「本当だ。今日は良いことがあるかもね」
「おやあ? おやおやおやおや、おやあ?」
「親です。父のほうの」
見ればわかる。ムキムキマッチョな母親はいない。多分。会話に入ってきた
「
「君が
(
ヒソヒソ。
(いえ……そんな。
つられて
「ごはん出来たわよー。
「あらあ? あらあらあらあら、あらあ?」
「
「こりゃ」
「はじめまして。
「
両手で
「ありがとうございます。せっかくのお誘いですけど、朝食はもう済ませてしまって」
「あら、残念だわあ。」
がっかりする
「残念だわあ。ホントに残念」
手を離さない。
「すみません。せめて、お参りだけでもさせてください」
「残念だわあ」
手を離さない。手を離さない。手を……。
「母さん。
「そうね! 良い考えだわお父さん! ああもう、その日が楽しみだわあ。あ、でもその前に
いきなり
「何言ッテンデスカ、父サン母サン。息子ハ無視デスカ? ココハダレ? 私ハドコ?」
「ドウシテコウナッタ」
顔を
「良カッタワネ
「ソウダネ。キット、
「
お参りを済ませ、家に戻る
「じゃ、また学校でね。ここの石段、けっこう急だから気をつけて下りてね」
「ありがと、
「うん。今日も一日がんばろう
いっしょに手を振る
思わず
「!」
〝お
「
とっさに叫ぶ
今まさに、石段に足を踏み出そうとしていた
石段の下へ落ちていく。
『翔べ!
誰かの声を感じた。彼の中に響く。
「
すんでのところで彼女を抱き止め、着地した。
「
「大丈夫か!
あせった声で聞く
「きさまぁ!!」
上で
「母さん!
「二人とも早くこっちへ!」
〝紫色のあいつ〟だ。確かに
「
「おじさん! これは何?!」
「きゃあ! こっち来る!!」
(ちくしょう!
憎しみが湧き上がる。巻き込みたくないのに、誰も危ない目に合わせたくないのに。
強い感情だった。あいつが憎くて憎くて……。
〝
『
(これはさっきの声? この声は……)
「
「
高い。
(誰かの力? おれに、貸してくれてる?)
参道では
桃の実や桃の木は
やがてそれに、火が付き大きな炎となり始めた。
「
「私も一緒に! 私も!
三人、同時に九つの言葉を
「
「——
三人は最後の言葉に念を込めて、叫んだ。
その光を浴びて——
炎は止まった。かのように見えたが。
〝お
「だめだ! みんな、
「早く! 早く!
「?」
あの嫌な音が消えた。すぐ後ろまで迫ってたはずなのに……。
思わず止まってしまった。地面を見る。
「
「!」
「!」
あいつの頭に、
あいつの背中を、
あいつの右目にはひびが入っていた。
——今度こそ、本当に止まったのか?
「
「
『
また
「声……。
今の声は、
その言葉は〝まだ、やつは攻めてくる〟ということか?
「見えた?」
「見えた」
「ぼくたちにも見えたよ!
「待って! まだ動いちゃダメだ!」
あいつのひびが入った右目から噴き出された、紫色の炎が突然大きくなって
「
「
炎は一瞬で消えたが、
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