第6話

そう思ったが、今のところこの状況を打破する手段が一つもない。

藁をもすがるつもりで、校長は神主と話をすることにした。

行ってみるとたしかに小さな神社だ。

小学校の近くにあるにもかかわらず、今までその存在を知らなかったのも無理はないと校長は感じた。

声をかけると神主がすぐに出てきた。

小柄で細身だが、眼光だけはやけに鋭い。

校長が一通り説明すると、神主が言った。

「あれほどの騒ぎですからね。私も知っています。とりあえず一度見てみましょう」

校長の車で学校へ行き、学校中を神主は歩いた。

神主が神主の格好のまま、学校内をうろついているのだ。

先生や生徒はもちろんのこと、報道陣も注目した。

しかし神主は、自分の周りがどれほど騒ごうと、平然としていた。

もれなく学校を見た後、神主が言った。

「今はいませんね。そのうちに戻ってくると思いますが。しかしいないものは私にもどうすることもできません」

なにかありましたら連絡してくださいと言い残して、神主は帰って行った。

校長が神主を送った。

神主のことはもちろん話題になった。

とくに海外では神主が珍しいこともあって、日本のエクソシストが現れたと大々的に報道された。

違う意味で騒ぎがさらに大きくなったのである。

校長は外を眺めていた。

相変わらず大勢の報道陣が学校にへばりつくようにいる。

不登校の問題も、解決には程遠い。

学校側に何かしら言ってくる親もいる。

近所の人も無視するわけにはいかない。

そんな中で校長はある一つのことで悩んでいた。

それはあの大量のお札のようなもの。

その存在を神主に知らせるかどうかで悩んでいたのだ。

あのことを校長は誰にも言っていない。

しかしあのやけに頼りになりそうな神主に事態を収拾させたいのなら、情報はできるだけ多く与えるべきなのは当然だ。

校長は悩んだ挙句に、やはり伝えることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る