第5話
女の歩く先に集結していた報道陣は。我先にと女の姿を撮り始め、そこは半ば修羅場となっていた。
女はそのままゆっくりと歩き続け、そして前回と同じく学校の塀のあたりで姿を消した。
その日、世界中で女はトップニュースとして取り上げられた。
その時、現場では報道陣同士の小競り合いが多発していたが、それでもみななんとか女の姿をとらえることができていた。
それがテレビで流され、新聞や雑誌に載ったのだ。
どこの国も自分の国のニュースが優先だ。
ここまで世界中の報道陣が足並みをそろえることは、世界大戦でも起きない限りないのではないかと言われた。
そしてあの女は本当に幽霊なのかという議論も、当然ながらあちこちで起こった。
もちろん肯定派もいれば否定派もいる。
そして否定派は女を見たというのは集団幻覚だ、テレビ映像や写真は捏造だと主張した。
幻覚なんて一度も見たことがない数十人が、いきなりはっきりとした同じ幻覚を見るなんてことはありえないし、なんの協力関係もないさまざまな国のテレビ局が、全く同じ映像を捏造するなんてことは考えられない。
しかし否定派はなにがなんでも否定すると言った特徴があるので、ありえないとか考えられないとか言っても、全く通じない。
それでも肯定派と否定派を集めて議論する番組はいくつも作られた。
両者の話し合いはいつまでたっても平行線で、会話にすらなっていないこともあったが、はたから見ている分には面白かったので、けっこう視聴率がとれた。
このように世間はネットも含めて大いに盛り上がったが、当事者である校長はそれどころではない。
学校に行きたくないと言う多くの生徒を学校に引き戻さなければならない上に、騒ぎ立てる親をなだめなければならない。
そのうえ近所の人の中には、あの報道陣を何とかしろと学校に文句を言う人もいるのだ。
報道陣に関しては、学校も近所と同じように被害者なのだが、そんな理屈が通じない人もいる。
報道陣は、前回ほとんどの報道陣が女の姿をとらえたので、もういなくなると思っていたのだが、数は少しばかり減ったような気がするが、まだ大勢が学校の周りに大勢居座り続けていた。
彼らはもう一度女の姿をとらえようとしていたのだ。
何度も同じ場所に表れる女の幽霊。
それをとらえれば高視聴率、高い売り上げが望めるのだ。
こんなおいしい機会を逃す手はない。
その点の報道陣の理屈や心理は、どの国も同じだったのだ。
校長が頭を抱えていると、教頭が話しかけてきた。
「近くの小さな神社の神主ですが、神通力や霊能力が半端ではないと評判です。一度頼んでみたらいかがですか」
「えっ」
その時校長は思った。
こんな小さな地方都市にある小さな神社の神主に、いったいなにができるというのか。
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