第3話

前回もそうだったが、今回も多くの生徒と二人の先生が見ているのだ。

全く同じ女を。

見間違いだの幻覚だのと言っても、それで納得するはずもない。

だいたい校長自身がそうは思っていなかった。

表現は人によって微妙に違うが、全員に一致しているのは、あれは生きている人間ではないということだ。

これだけの騒ぎでそれも二回目。

学校内だけでおさまるわけがなかった。

とうとうローカル新聞とローカルテレビ局がどこからか聞きつけて、取材に来てしまったのだ。

校長は適当にごまかしたが、そんなもので大人しく帰るわけがない。

彼らは実際に女を見た生徒たちに話を聞いて回った。目撃者の数は多く、その証言は一致している。

とてもデマとかなにかの間違いとは思えない。

幽霊の報道なんて新聞社もテレビ局もニュースにしたことは一度もなかったが、最終的には目撃者の数がものを言い、両社ともそのまま報道した。

主に小学生とはいえ、これほど多くの人間が幽霊をはっきりと見るなんてことは、そうそうない。

それによって次に広まったのがネットである。

その広がりは驚異的で、拡散や炎上が当たり前のネットにおいても、これほどまでに盛り上がったことは記憶にないと言うものが数多くいた。

連日トレンド入りし、それによって中央の報道陣の耳にも入った。

全国区の新聞社、テレビ局、そして雑誌社までが取材に来るようになったのだ。

校長は相変わらずのらりくらりで、実際に幽霊を見た五人の先生には固く口止めをしていたが、小学生にそんなものが通じるはずがない。

彼らは朝から学校の外に待機して、多くの小学生の証言を集めた。

テレビ局のカメラマンは、遠慮なく学校にカメラを向けた。

もちろんニュース映像として使うためである。

その時、四階の五年A組の廊下側から、壁を通り抜けてあの女が現れた。

生徒は教室の前後に避難をし、それから次々に教室を飛び出していった。

女はそのまま教室の反対側へゆっくりと歩いていき、反対側の壁を通り抜けた。

カメラマンはすぐに気づいた。

校舎の四階の壁から女が出てきたのを。

最初は校舎全体を撮っていたため引きのショットだったが、すぐさま女のアップに切り替えた。

女は四階の高さのままで、宙をゆっくりと歩いている。

そばにいたディレクターも気づき「撮れ。撮れ!」と叫んでいた。

新聞記者も気づいてカメラマンが女を撮影した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る