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「まぁ、そこに座ってもらって。」


とりあえず言われた通りに座ることにした。


「こんにちは、無常仮寝です。こちらはローズ=ハイドです。」

「こんにちは。」

やはり偉い人との話のせいか、話し方が少しぎこちない。


「あはは、落ち着いて。」

「あ、はい。」

側から見ている分には面白い…ってこっち睨むなよ。心読めてる?


「単刀直入に言わせてもらうとね、私たち日本政府は君達の持っている物、そして権利に興味がある。」


おいおい、いきなり来たな。


そして、と彼は続ける。

「もちろん君の配信も見させてもらっているよ。その上で日本政府は君の行動を咎めないという事になった。」


 え、なんで?

「え、なんで?」

あ、口からついの本音が出てしまった。


「難しい事は省くけど、簡単にいうと日本国外で犯した犯罪を、裁くことはとても難しいんだ。そもそも被告人が異世界に行けるというのにどうやって裁くというんだよ。」

「確かに、その通りですね。」

まぁ、異世界に行ける人間をどうやって檻の中に封じ込めるというんだろうか?


「そもそも君たちの目的は地球を旅する事だろ?違うかい?」

「いえ、合っています。」

彼の顔が綻ぶ。


「私達は君の持つ力や物、権利について興味がある。君達は世界を旅したい。そこでだ。取引をしないか?」

「取引?」

彼が言うには僕たちの持っているアイテムを買い取って転移者にする権利も欲しいという。

さて、どうするか。


先程、ローズと話した計画には4つのプランがある。

ABCDとあって、Aは今の日本に協力してもらうプラン。

Bは、他国にお願いするプラン。まぁ裏切ったり裏切られたりするかもだけど。

Cは、国に頼らず自分たちで民間人に頼んでいくプラン。

そして、Dは一度異世界で配信して、現地で旅をして協力者を先に集める方法だ。


このままだとAプランで行けそうだし…本当は個人的にはDが一番面白そうなんだけど。

まぁ、Aが途中で崩れそうになったらDに路線変更しよっかな?

ちなみに先程全然知らない人にあげたガラケーはもしもの為の秘密兵器ってやつだ。


「ええ、ですがしっかりと契約を結びましょう。」

ローズに目配せをする。

「あ、それじゃあ魔法契約をしませんか?」

「魔法契約?なんだい、それは?」

少し警戒色を出し始めた総理大臣を無視して話を続けていく。

「簡単に言えば『契約の絶対化』です。契約内容が魔法的に遵守されます。ですので俺たちが逃げる事ができません。」

「…いいのかい?逆にそっちが不利になりそうだけど?」

構いませんと彼女の答えと共に僕が魔石を出す。

「紙はありますか?」

すると秘書らしき人が白紙の紙を持ってきてくれた。


「魔法契約には魔石を使います。錬成」

紙にインクとして描かれた魔石が見える。


契約内容は以下の通りである。



1、乙と甲はアイテムの取引ができる代わり、甲の旅の支援をする。


2、甲は転移者を2名まで指名しなければならない。


3、乙と甲はお互いに危害を加える事ができないとする。



「こんな単純な内容だけど、いいか?」

「…できれば転移者の人数を増やしたい。」

「…何人?」

「…10人くらい」

は?外交団でも送るつもりなのだろうか?勘弁してほしい。

あの世界にあんまり来てほしくないしなぁ。

ま、いっか。別に自分で指名していいんだし。


「いいよ、わかった。じゃあ契約はこれで。」



1、乙と甲はアイテムの取引ができる代わり、甲の旅の支援をする。


2、甲は転移者を10名まで指名しなければならない。


3、乙と甲はお互いに危害を加える事ができないとする。


乙=葱一騎

甲=無常仮寝


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