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契約は成功した。

そもそもの話、魔法契約なんてものはローズから聞いたものだ。

「契約するのに魔法契約使わないのか?」


その言葉で思いついた僕は計画の一つにしようと思ったわけだ。

旅は明後日から始まる。

それまでにアイテムの買取とか身体検査をやる予定だ。


明後日からの旅が楽しみでたまらなくて、僕は早く床に着くことができなかった。


そう、自分のやらかした出来事も知らないで。



..

.


SIDEアジアの某組織

数少ない暗闇、誰も知らないような場所で声が響いていた。

真っ黒な画面が仕切りのように、彼らは話していた。


「それで?例の転移者が渡してきたわけか?」

「はい。只今、このガラケーをそちらの方に輸送しています。」


先ほど、無常が自分から渡したガラケーについてのことだった。

元々、無常は日本に頼れなかった場合に備えて他国との繋がりを持とうとしていた。

だが、相手の所属する国も聞かずに直ぐにガラケーを渡した彼は何処の国の人間に渡したのかを全然考えていなかった。

だから、予想しなかったのだ。それが変な勘違いを引き起こすことになるなんて。


「どうしますか?」

「何か重要な物がデータとして入っているかもしれない!直ぐに調べよう!」

「相手は一瞥で私に気づき、そして渡してきました。恐らくですが、我々と同じ考えの者でしょう!」

「我々の日本革命がようやく実現する時が来たのかもしれないと言うわけか!」

「直ぐに手筈を整えます!」


そして、勘違いはさらに加速していく。


CIA、FBI、そして公安。

彼らもこの組織にスパイとして潜入していたのだ。

故に、

(((無常仮寝が犯罪組織との接点を持った!)))


だが、彼らは知らない。

それが勘違いだと言うことを…



そして。

SIDEメアリー・ハイド


「うーん面白いことになっているねぇ」

ただ一人、そこには魔女が居た。


別にそれらしい格好をしているわけでもない。

何処にでもいる、人妻…いや、未亡人にしか見えない。


だが、彼女の発するオーラは娘といた時と違って、『ナニカ』と呼ぶべき者になっていた。

時代が時代なら、処刑されていてもおかしくない程に。


彼女がいるのは地下深く。

どれくらい深いかと言うと、ダンジョンの攻略できる一歩手前だった。

後ろには恐らく門番であったであろうバケモノだった物が無惨な姿になっていた。


彼女の視界には二つの画面があった。

一つは娘のローズが寝ている映像。

もう一つは何処かの通信記録に見える。

「“無常仮寝が犯罪組織に加担している”ねぇ。ほんと、裏目裏目に出ちゃってるじゃん」


もちろん、彼女は知っている。

彼が加担するつもりなど、一切ないと言うことを。


もちろん、普段ならこんな哀れな人がいたら気が向いたら手助けするようにはしている。

何せ彼女の所属していた魔術結社は簡単に言えば“人助け”がメインなのだから。


だが、今回は静観する事にした。

彼らはこの先、これ以上のトラブルに巻き込まれると予想していたためだ。


この程度の勘違い、トラブル程度片手間で解決して貰わなきゃ困る。

故に、彼女はさらに過酷になるであろう試練を与える。


さて、一つ問題を出そう。

もし、自国の失われた秘宝が他国にあった場合どうするだろうか?

私なら取り返そうとするだろう。


だが、もちろん他国もそう簡単に返そうとは思わない。


(この街にはお世話になってきましたし、これぐらいはしないとね。)


この街は迷宮都市と呼ばれるくらいダンジョンで成り立っている。

そして、このダンジョンのコアとなる物には日本のあの例の剣が使われているのだ。

日本は恐らく、ダンジョンがコアで壊れる事を知っても取りにこようとするだろう。

外交か、それとも武力かは分からない。


だが、このコアが日本人でしか得る事ができない以上、時間の問題だ。

そのため、私は試練を与える事にした。

日本人にしか与えられない試練を。


「1、16、39。数秘よ、薔薇にその意味を与えたまえ。ハイドの名の下、ここにの試練を与えよう。」


香水を振り撒く。

薔薇の香りがするその香水は黄金と銀色の薔薇を咲かせていく。

もちろん植物の薔薇だが、その花弁には光沢が宿っていた。








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