迷宮都市 ゼリウス

21

「では、我々はこれにて。」


街に入ると『銀の盾』達と別れることになった。


こちらもようやく依頼解決ということだろう。


「では、依頼解決ということで成功報酬をください。」

「…わかった。これに関しては正当なお金だからな。」

お金を受け取るとエモンダーは背を向ける。

恐らく、これ以降彼と会うことは滅多にないだろう。

こんな世界だ。文字通り、一期一会なのかもしれない。

エモンダーが離れていく離れていくのを見ていた僕は思わず声を出してしまった。

「あ、あの!すみません。その、なんで僕の事嫌いなんですか!?」

言ってから後悔した。

エモンダーが振り返る。

僕は彼の目をしっかり見ることができなかった。

コメント欄すら見ることができない。

目の逃げ場所を探せなかった僕は思い切ってエモンダーの顔を見ていた。

あいも変わらず蔑んだ目で見てくる。

だが、どこか驚いた様子でもあった。

ほんの少しだけ、僕の心の中に“やってやった!”という幼い嗜虐心が歓喜を上げていた。

彼の閉ざされた口が歯車で動くように重々しく少しずつ開く。


「…お前、ネズミの臭いがするんだよ。」


風呂には入ったのだが?

いや、もしかしたらちゃんと洗えてなかったのかもしれない。

少しだけ恥ずかしくてコメント欄は見れなかった。

だが、エモンダーには続きの言葉があった。


「俺は1の神、太陽神からの加護をもらっている。俺の持つ加護の効果はそいつがクズであればあるほど腐った臭いがするという加護だ。」


「お前はネズミはネズミでもドブネズミのような臭いがしたんだよ。」


「魔物でもまだマシな方なんなんだ。…なのにお前はなんなんだ!?そんなに「それだけ?」あ?」


「たった、それだけの理由?」


面白みに欠けた奴だよ、お前。

無意識にそう言ってしまった。


逆に可哀想だと思った。

コイツは、なんて残念な加護をもらってしまったのかと。

『銀の盾』によると加護の効果は人それぞれらしい。

よかった。こんな加護をもらっている奴が他にもたくさんいなくて。

コイツは、たとえ相手が初めての人だろうとクズであるだけで軽蔑し、その人との関係を最初から断ち切っているのだ。

簡単に言えば、旅行に行ったのにそこの悪評の所為で観光をしない。

新しいゲーム機を買ったのに面白くないと聞いたので全く触ろうともしない。

初めから腐ったクソみたいな先入観で人と向き合っているのだ。


「あー、うん。俺が言うのもなんだけど。その人生、楽しい?」

「!おま、お前に何が…!?」



そして。気づいたら、いつの間にか街中を歩いていた。恐らくあの後あいつは怒っていてこっちに来たようだが、人波に流されて僕に襲いかかることはできなかったようだ。

なにせ、自分も今、人波に流されて歩いている。

今回、僕が学ぶべき教訓は悪い先入観を持って人と接することで人生をくだらない物にしないと言う事を学んだ。


…うん、よし。

「気分転換だ。宿を探そう!」

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おお!

あいつ感じ悪過ぎだろ

まぁ、カスであることは否定できん

あいつ、ああやって襲いかかって来たと言うことは図星ということだなw

1の神様って太陽を司ってると、

エモンダーどんまい

煽りあんまり苦手なのが意外

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多分、こう言う所が日本人の悪い所だと思う。


そんなこんなで歩いていると市場が見えてきた。

ほんと、異世界に来たって感じがした。

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『よし、気を取り直して今から10回拍手した時に目に入ったコメントを市場で買うぜ!出来るだけ安く済む物で頼む!』

つまり?

安価?

安価だと!

キタキタ!

しかも配信安価!

異世界初安価なのか

よし、スナイプしてやる

視聴者数エグいて

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こうやって気分上げとかないとやってられないね。本当に。

そうやって安価をしてみると当たったのはポーションだった。

ポーション、ねぇ。まぁ色々あったけど探してみましょうか。

そうして探していると一つの露店を見つけた。

「おじさん、それポーション?」

「おう!これは治癒、こっちの赤いやつは畑の成長促進、こっちが爆発で全部初級だ。値段は1000エニー、1500エニー、3000エニーだ。買うかい?」

「鑑定してみても?」

「おう、構わねぇぜ?」

鑑定してみるとそれぞれの効果が書かれていた。ちなみに、爆発のポーションにはニトログリセリンは入っていなかった。

「それぞれ一個ずつ買うよ。」

「はいよ。えっと…5500エニーだ。」

「はい。」

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『安価達成!』

やっぱり爆発するポーションあったじゃん

成長促進って畑に撒くやつか

逆に畑に撒かない奴があると言うことだな

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ほんと、鋭いね。君たち。

「そういえば錬金術師なんですか?」

「おうよ。これら全部自作だよ。」

すげ、このおじさん。

略してスゲオジ。

「それじゃあ錬金術師ギルドとかってありますか?」

「あぁ、もしかして外からの人か?そこを曲がって右に行って路地裏を抜けると青い屋根の建物がある。それが錬金術師のギルドだ。」

それを聞いてお礼を言ってから向かった。

足を進めるのはさっきの事もあり少し重いが、これも新しい一歩だと思えば悪くない。


そして、新しい一歩を進めた。


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