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「デカンド!耐えるんだ!ナンシー!意識を持て!」

「「ッ!」」

夜の森から声が聞こえた。

よくよく耳を澄ましてみると鉄と何か固いものがぶつかる音が聞こえる。

「助けに行きましょう!」

今の自分には護衛対象がいる。だが、断る事は出来ないし何より見捨てるだけの理由がない。

「行きますよ!」

「わかりました。」


夜の森を駆けて行く。コメント欄もようやく面白くなってきた言わんばかりに加速していく。視聴者数もみるみる上がっていく。鰻登りだ。

木々を避けて行くと狼とゴブリンの群れとの交戦中の彼等がいた。

「!そこの人、助けに来た!」

「あぁ、ありがとう!一人動けないんだ!」


どうやら負傷者がいて助ける事ができないらしい。


「おい!錬金術師。ポーションは持ってないのか?!」

またポーションかよ。何?錬金術ってポーション作るのに向いてんのかね?

「残念ながら持っていない。それよりもそっちの戦闘を終わらせた方がいいんじゃないか?」

「はぁ!?お前、ポーション持ってないのに錬金術師がどうやって攻撃するんだ?」

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『逆にどうやってポーションで攻撃すんの?』

爆破?

爆破じゃね?

爆破でしょ!

爆破!

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なるほど、爆破か。確かに水蒸気爆発でもいけたんだ。アリかもしれない。

「こうやってな」

無詠唱で水を創造し、錬成で指向性を持たせて吹き飛ばす。

相変わらず木々が禿げていくが仕方ない。

「な、何が…?一体?」

「あんたすげぇな!…これでポーションがありゃいいんだがな…」

二人の反応が明らかに割れている。

片方のポーションが欲しい方は尊敬と畏怖、期待など。

だが、エモンダーは違った。彼は僕に対し明らかに敵意、嫌悪感、そして蔑んだ眼。明らかに村にいた時の正義感溢れる青年じゃないように見える。

「状態を鑑定」

『状態、正常』

「!?勝手に鑑定するな!」

どうやら鑑定されている事は相手にバレてしまうらしい。

「いや、すまん。そこの女性の状態を確認しようと思ってだな…」

「…そうか。ならば次から気をつける事だな。」

どうやら半端ない程に嫌われているらしい。

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いくらなんでも態度悪すぎだろ

もしかして本当に犯行がバレているとか?

どうやって?

異世界だったらあり得るぞ?

村にいた時とは大違いだな

猫被ってた?

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彼が僕に悪意を向けている理由はわからないがとりあえず怪我をした女性に近づく。      

背中にどうやら弓矢が当たったらしい。

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『どうすればいい?』

まずは綺麗な布、お湯を用意するんだ。

消毒剤とか学校で触ったことあるだろ?あれも用意しとけ

一番このコメント欄が活かされている瞬間

いつも民度悪いけどこういう時は手を貸さないとな

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「ポーションは持っていないが手当する事なら「私がやる!」え」

「…君の仕事は私の護衛だ。わかったな?」

無言を了承と捉えたのかすぐさま手当をしていく。だが、どこか拙い。

治療を受けている彼らも彼らで今の事に対して驚いているようだった。


____________________

『わからせってこの場合どうすればいいと思う?』

ぶっ飛ばせ

感じワル

圧倒的医療技術でのワカラセ

いや、こいつ回復魔法じゃない

錬成でどうにかならんの?

魂分解したエネルギーで解決とか?

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戦いが終わり、死者もいなく、五体満足の負傷者の手当をしているのにも関わらず、どこか居心地の悪い空気を感じていた。












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