第125話

大志が刺された時のあの光景が、この数時間で何度も何度もよみがえって来た。



「怖かったんだからっ!!」



涙と鼻水でグシャグシャになったあたしの顔を、大志は特攻服の袖で拭いた。



「ごめん、千沙。心配してくれてありがとう」



そう言ってフッと優しい笑顔を見せる大志。



その笑顔を見た瞬間、安心すると同時に胸の奥が燃えるように熱くなった。



「……好き」



「は?」



「あたし、大志の事が好きなんだから! だから……だから、心配かけさせないでよ!」



プッと頬を膨らまし、そっぽを向いてそう言った。



すると大志は一瞬キョトンとした表情を浮かべ、それから「了解。俺のお姫様」と言い、あたしの頬にキスをした。



「俺も好きだよ」



そっと耳元で言われて、顔が更に熱くなる。



きっと、真っ赤になってるだろうな。



でもいいんだ。



大志の顔だって真っ赤だから。



ついでに言うと、恋羽とアツシもね?



どうやら、2人もようやく恋人同士になれたみたい。



その光景を見ていると、大志があたしの顎を掴んで「よそ見厳禁」と、言ってきた。



「え?」



と、半分開いたままの口をふさがれる。



暖かな感触が唇を伝わってくる。



チュッと軽いリップ音がして離れると、周りにいたメンバーたちから拍手と歓声がわいた。



それだけじゃない、教室の窓から見ていた生徒たちからもだ。



人前でキスしちゃった……!!



そう理解すると、また顔が熱くなっていく。



「もう、大志のバカ!」



「いいだろ別に。全校生徒公認カップルってことで」



そう言って、ニッと笑う大志。



イケメン総長様との恋は、以外と甘いのかもしれない。

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