第126話
~強side~
冬流組を潰して数カ月。
街は平和を取り戻していた。
腕に刺青をしている連中も減ったし、赤旗は本来の活動を取り戻していた。
俺の家にきていた女たちも安全を取り戻したことでそれぞれに家に帰ることができた。
でも……。
1人だけ、ここに残った女もいる。
桃花だ。
「強、ちょっと話があるんだけれど」
いつも隣の空き室を使っている桃花が、ひょこっと俺の部屋に顔をのぞかせた。
「なんだ?」
「入っていい?」
「あぁ」
ずっと一緒にいるのに、桃花は俺の彼女面をしようとはしない。
きっと俺に遠慮しているんだろうな。
でも、組を潰したことをきっかけに大志とアツシは付き合い始め、そして力耶はアパートを借りてあの女と同棲を始めていた。
力耶の場合は付き合う事をすっ飛ばして結婚を視野にいれているらしい。
そうなると、残ったのは俺1人。
まぁ、今まで散々遊んできたから、罰が当たったんだろうけれど。
桃花は俺の隣にちょこんと座って、そして話にくそうに視線を泳がせた。
俺はそんな桃花の髪をなでる。
艶のある綺麗な髪に指を絡めると、桃花はくすぐったそうにわらった。
「ねぇ、強。あたし妊娠したみたい」
笑った事で緊張がほぐれたのか、桃花はスラッとごく当たり前のようにそんなことを言った。
「は……?」
「子供がね、できたの」
ニコニコと微笑み、自分のお腹を触る桃花。
キョトンとしているは俺だけ。
「本当かよ……」
そう呟いた顔が、なぜか徐々ににやけていく。
だって、俺が父親ってことだろ?
子供って……なんだよそれ。
それってすげぇことじゃん。
俺は思わず桃花を抱きしめていた。
「すっげぇなお前! 母親になるのか? それで俺は父親になるのか!?」
「そうだよ、強。あたしたち、お母さんとお父さんになるんだよ」
穏やかな声が腕の中から聞こえてくる。
それを聞いた瞬間、胸の奥の方から暖かな感情がこみあげてきた。
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