第124話

~千沙side~


大志たちが学校を早退してから2時間が経過していた。



まだ、大志たちは戻ってこない。



あたしは午後の授業を受けながら、ずっと窓から校庭を見つめていた。



正直、授業なんて受けていられる精神状態じゃなかった。



不安で不安で仕方ない。



きっと、それは恋羽も一緒だと思う。



でも、大志があたしに『必ず戻る』と言ってくれたから、こうして学校で待っているんだ。



「きっと大丈夫だよ」



隣の席の恋羽が、そっとあたしの耳元でそう言った。



「うん……」



あたしは小さくうなづく。



あたしたちは信じて待ってなきゃダメだよね。



他の誰かが無謀だとか、無理だとか言って笑ったとしても、あたしたちだけは……。



そう思った時、外からうるさいバイクの音が聞こえてきた、



ハッとして立ち上がり、窓から身を乗り出すあたしと恋羽。



他の生徒たちも、何事かと興味津々になっている。



「ねぇ、あれって……」



見慣れたバイク。



見慣れた特攻服。



それに、見慣れたチームの旗。



「大志だ!!」



「アツシだ!!」



あたしと恋羽はほぼ同時にそう叫び、そして教室から出て走り出していた。



後方で授業中だった先生のどなり声が聞こえてくる。



でも、そんなこと気にしてられない。



先生、今だけは悪い子にならせてください。



そして校庭へ抜けると、中央あたりで大志がバイクから下りて待っているのが見えた。



「大志……!!!」



その姿に、思わず涙がにじんでくる。



走る勢いに乗せて大志へと抱きつく。



「千沙、ただいま!」



「お帰り……お帰り、大志!!」



ギュッと抱きしめられると、そのぬくもりが本物だと実感する。



よかった……。



よかった。



よかった。



よかった!!



ジワジワとあふれ出した涙は止まらなくて、あたしは大志の胸をドンドンと叩いていた。



「千沙?」



「心配……したんだから!」



大志がいなくなったらどうしようって。



大志が、またあたしから離れちゃったらって。

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