第117話

医者の息子だなんて、知らなかった。



「カナタは厳しい家庭で育っているんです。



だから、後継ぎの息子が同性愛者だということを親が認めるハズがありません。



カナタはずっと1人で抱え込んでいました。そんなカナタに手を差し伸べたのが、夏夢なんです」



なるほど。



だから、カナタはたった1人で冬流組とやらに反発し、ライブハウスの裏に捨てられたわけか。



冬流組の名前を今まで出さなかったのは、赤旗にさらなる危険が迫る恐れがあったからかもしれない。



カナタはカナタで、必死で赤旗を守っていたんだ。



「なぁ。俺はさっきの言葉に偽りはない。後は、お前がどうするかだ」



そう言い、俺は夏夢を見た。



困ったように黒目が泳いでいる。



「このままでいいのか? お前の仲間がどんどん傷ついてんだろ?」



「……俺は……」



「言ってみろよ」



「俺は、このままじゃ嫌だ! 気持ちを理解しあえる仲間がいなくなるなんて……!」



その言葉に、俺はニッと歯をのぞかせてわらった。



「じゃあ、決まりだな」



俺はそう言い、今度は自分から夏夢へ手を伸ばした。



おずおずとその手を握る夏夢。



先ほどとは違い、その手にぬくもりを感じる。



言葉には出さなくても、少し興奮気味みたいだ。



「よろしく」



「こ、こちらこそ」



こうして、俺たち4つのグループが手を組んだのだった。

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