第113話

☆☆☆

~大志side~


集会を行った翌日。



俺は3階の空き教室にいた。



教室には、いつもの幹部クラスのメンバーたち。



みんな、昨日の集会から落着かない様子だ。



そりゃそうだよな。



敵だと思っていた連中が、実は敵ではないかもしれない。



そいつらを操っている連中が本当の敵だなんて、混乱して当然だ。



「大志、今日本当に赤旗に会いに行くのか?」



キョウがそっと話かけてきた。



ここにいるキョウとアツシにだけは、今日赤旗に会いに行くことを伝えていた。



情けないが、もしもの事があった時に、助けにきてくれると思ったからだ。



「あぁ、行ってくる」



「今までの事件が、全部赤旗の仕業だったら、相当危険だぞ?」



「わかってる。だから、お前とアツシにだけは伝えて行くんだよ」



「そうか……」



でも、きっと赤旗は危険なヤツではない。



俺は、そう思っていた……。


☆☆☆


それから放課後まではあっという間だった。



俺は真っ直ぐ帰宅し、そして部屋のクローゼットの前に立った。



特攻服でいくべきかどうか、迷っている。



今日は喧嘩をしにいくわけでも、集会があるわけでもない。



赤旗と、普通に話がしたいだけだ。



俺は手に取りかけた特攻服から手を離し、隣のTシャツに手を伸ばした。



今日は、特攻服は必要ない。



喧嘩用の道具も、なにも必要ない。



ほんの少しの不安を打ち消すように、俺は自分にそう言い聞かせた。



夕食を終えた頃、ちょうど家の前で2台のバイクが止まる音がした。



「あら、もう来たの?」



今日も出かけると説明しておいたので、母親もバイクの音に敏感に反応した。



「あぁ、行ってくる」



「気をつけなさいよ? くれぐれも、千沙ちゃんと泣かせないように!」



「なんで千沙が出てくるんだよ」



俺は母親を睨みつける。



これから行くぞという時に千沙の事を思い出すと、どうも調子がくるってしまう。


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