第112話

~千沙side~


恋羽の恋の話をしていた時、強が家に帰って来た。



あたしはハッとして玄関まで速足で出迎える。



「なんだよ、そんなに焦った顔して」



「あ、ごめん……」



かなりこわばった顔をしていたみたいで、強がプッと吹きだす。



笑われちゃった。



恥ずかしいなぁ……。



頬を両手で包みこみ、表情が柔らかくならないかと動かしてみる。



「で、なにか用事?」



「あ、うん。今日の集会どうだったのかなって」



「は? それで風呂も入らずに俺のこと待ってたのか?」



リビングに戻ると、もうみんなお風呂から上がったところだった。



それを見て、強が呆れた顔をする。



「だって……大志が危ないことしないか心配で……」



「はぁぁぁ……」



強は大きくため息を吐き出して、その場に座り込んだ。



え?え?



あたし、なにかしちゃったのかな?



「お前な、そんな心配はするなって大志に言われてるだろ?」



「そ、そうだけど……」



「それでも気になって風呂にも入れないって?」



「う……まぁ。そんなところ」



そう言ってうなづくと、強はまた深いため息を吐き出した。



「大志の姫はとんだ心配性だな」



「え……?」



「なんでもねぇ。今日の集会は赤旗ができた当初の話をした。明日、赤旗本人にも会う事になっている」



「本人に会うの!?」



あの、卑怯で危険な赤旗に!?



あたしの不安はどんどん膨らんでいく。



そんなことして大丈夫なの?



絶対に、危険だよね?



そう思っていると、「安心しろ」と、強が言った。



「え?」



「赤旗は、たぶん危険なヤツじゃない」



「どういうこと……?」



今までみんなだって赤旗を警戒してきていたよね?



危ないやつらだって。



だから、あたしたちは強の家にお世話になってるんだし……。



「まだ決定的なものはないが、危険なのは赤旗を利用している奴らだ」



「赤旗を、利用している……?」



「あぁ。今までの問題も、すべてそいつらの仕業かもしれない。赤旗は、汚名をかぶせられているだけかもしれないんだ」



「そうだったの……?」



強の言葉に、あたしの頭は半分パニック状態。



話にしっかりついて行くことができていない。



「お前に話したってことは、大志には内緒な」



「う、うん。わかった」



あたしは混乱したままの状態で、うなづいたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る