第106話
「電話、平気か?」
《今なら、大丈夫ですよ》
「ちょっと、お前に聞きたいことがある」
《なんですか?》
「赤旗の弱点についてだ」
《弱点……?》
「あぁ。千沙が、もしかしたら赤旗は女が苦手なんじゃないかって、言っている」
俺がそう言うと、カナタは一瞬押し黙った。
その沈黙は、女が弱点だということを肯定しているようなものだった。
「カナタ? 本当に女が弱点なのか?」
《弱点……というか……》
モゴモゴとくちごもり、はっきりしない。
《元々は、そうだったんですけど……。今はグループが大きくなりすぎて、もうそんなの関係なくなってますよ? 俺自身、赤旗の本拠地を知らないですし》
「なんだと?」
チームの一員であるカナタが赤旗の本拠地を知らない?
そんなこと、あるんだろうか。
「それは、お前が1度裏切ったとバレたから本拠地を変えられたんじゃないのか?」
《いえ、違いますよ。チームが大きくなるにつれて俺たちメンバーにも教えてもらえないものが増えていって、今ではもう、トップが誰なのか、組織がどうなっているのか。
わからないんっす》
困ったように答えるカナタ。
そういうことか。
だからカナタから入ってくる情報は革新的なものが何もなかったのだ。
俺はそれをようやく理解し、ため息をこぼした。
けど、赤旗が元々女を不得意としていたことだけは、わかった。
これも、立派な弱点だ。
「サンキュな、カナタ」
そう言って、電話を切ろうとした、その
「どうした?」
切ろうとした親指を引っ込める。
《あの……実は俺たち……》
そう言って、また口ごもるカナタ。
さっき以上に言いにくそうにしている。
「どうしたカナタ? 言いたくないなら、無理に言う必要はないぞ? お前の身が危ないような情報なら、無理して話す必要はない」
それに、そんな危険な情報なら俺が自分でとってくる。
《いや、危険が及ぶような話じゃないんすけど……。あの、話を聞いても仲間でいさせてくれますか?》
真剣な口調のカナタ。
俺は自然を背筋が伸びていた。
「あぁ。お前は俺たちの仲間だ。どんな話を聞いても、それは変わらない」
これは俺の本心からの言葉だった。
カナタは危険をおかして俺たちに情報を流してくれている。
自分が拷問にあっても、まだ俺を助けるために病院にも来てくれた。
そんなバカな男、俺の仲間以外にありえないだろう。
《本当は赤旗ってグループは……》
カナタの言葉に、俺は目を見開いた……。
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