第85話
《今日、カナタが病院に来た》
「カナタって……赤旗のか?」
《そうだ》
「あいつ、どの面下げてお前に会ってんだよ」
病院のベッドに缶詰めになっている大志を思い出すと、腹の底から怒りが湧いてくるようだった。
《そう怒るな。千沙を誘拐したのにも、ちゃんとした理由があった》
理由だと?
大志が落ち着いた様子で、病室での出来事を説明する。
そうか。
カナタは拷問を受けていたのか。
それなら、見逃してやる予知もある。
でも、俺が刺されていたならどんな理由があろうと、絶対に許さないがな。
それに比べ、やっぱり大志は寛容だと思う。
「で、カナタはなんの用事だったんだ?」
《それが本題だ。カナタが言うには、今日の夜中、赤旗が病院へ乗り込んでくる計画を立てているらしい》
「病院に?」
俺はあきれ果ててため息をついた。
どこまで卑劣なやつらなんだ。
《あぁ。他にも動けるメンバーたちには連絡を入れてある。病院の近くに公園があるから、夜そこに集合だ》
「わかった。お前は休んでろよ?」
《あ?……あぁ》
曖昧にうなづく大志。
おおよそ、病院を抜け出して参加するつもりでいたんだろう。
でも、完全に治ってないヤツに出てこられたら、こっちは迷惑なだけだ。
「大志、お前は来るな。そのかわり、俺が暴れてやる」
《……そうか。わかった》
「安心しろ。俺は負けない」
そう言いきると、大志はおかしそうに《ははっ》と、笑った。
《今回はお前に任せる》
「あぁ。結果を期待しとけよ」
そう言って、俺は電話を切った。
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