第84話

~強side~


赤旗の動きが目立ってき始めたことが原因で、俺の家に4人の女が居候することになった。



大志の幼馴染の千沙。



アツシの彼女の恋羽。



力耶が助けた瞳。



そして……。



俺のベッドフレンドの桃花。



体だけの関係の女なら、他にも沢山いた。



けれど、俺にとって桃花は他の女とは少し違っていたんだ。



特定の女を作らない俺に文句を言う事もなく、騒いで涙を流すこともない。



俺が来いと言えばすぐに来るし、帰れと言えばすぐに帰る。



桃花は俺にとって便利な女だったが、その冷めているともとれる態度が、やけに気になってしまう。



俺のことが好きなんだろ?



だから、抱かれにくるんだろ?



だったら、もっと感情を表してみろよ。



なんて、感じてしまうときがある。



女なんて真面目に付き合ったらめんどくさい。



元々ボクサーを目指していた俺は、いろんな女がいいよってきた。



だけど、1度遊んだだけですぐに彼女面して、『ボクサーを目指していた強い男の彼女なのよ』と、わがもの顔で周囲にふるまうようになる。



今まで、俺に近づいてくる女なんて、俺を利用としているやつらばかりだった。



でも……。



やっぱり、桃花は違った。



彼女面することもないし、俺に抱かれた事を周囲に言いふらすこともない。



そんな桃花が、ふいに見せる寂しそうな表情が、俺の脳裏に焼き付いて離れないのだ。



抱き終わったあとに『もう帰れ』と、言ったときの桃花の表情。



今にもこぼれおちそうな涙を必死で我慢していた。



そんな顔で、桃花は笑うんだ。



『また、呼んでね』



そう言って。



その時のことを思い出すと、胸が締め付けられた。



こんな気持ちになるのは初めてのことで、とにかく、桃花をそばに置いておきたい。



そう思ったんだ……。



隣の部屋で女たちのにぎやかな声が聞こえる中、俺はテーブルの上で震え始めた携帯電話を手に取った。



大志からの電話を知らせる画面。



なにか、あったのか?



そう思い、すぐに電話にでる。



「もしもし?」



《強、俺だ》



「あぁ、どうした?」



大志の声は低く、真剣だ。

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