第69話
「それでいい。大志も、安心して治療に専念できる」
ホッとしたように力耶は言ったのだった。
☆☆☆
赤旗の本当の姿を知ったあたしは、その日から極力大人しく、恋羽と2人で行動することにしていた。
恋羽にあの日聞いた話は伝えられずにいたけれど、恋羽は何も聞いてこなかった。
「今日はスイーツ食べて帰ろうよ!」
放課後、恋羽があたしの顔を覗き込んで聞いてくる。
最近は、もう空き教室にも顔を出していない。
あたしがいたら、きっとみんなの邪魔になってしまうと思うから。
「今日はじゃなくて、今日もでしょ?」
そう言って、あたしは笑った。
「いいじゃん、行こうよ!」
「仕方ないなぁ」
恋羽は、あたしがどこか落ち込んでいると感じているようで、色々な場所に一緒にいくようになった。
たしかに、あたしにとってもいい気分転換になっている。
時折振り向いて、少し心配そうな表情を見せる恋羽。
そんな時は、本当の事を伝えられたらいいのになと、思ったりもする。
たぶん、今のあたしは大志と同じだと思う。
守るためには、秘密にしておかないといけないことがある。
その気持ちが、今ならわかるよ。
恋羽と2人でクレープを食べながら、あたしはそう思った。
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