第55話

~大志side~


カナタから電話があったのは集会翌日の昼過ぎだった。



この日特に予定の入っていなかった俺は、パソコンを使って赤旗の情報を少しでも調達するつもりだった。



丁度パソコンを起動しネットにつなげた時、携帯電話が鳴った。



画面の表示にはカナタの文字。



「もしもし?」



迷わずに取ると、ボソボソとしたカナタの声が聞こえてきた。



《もしもし、俺。カナタだ》



「おぉ。どうした? 赤旗のことで、なにかわかったのか?」



《いや……違う》



「なら、なんだ?」



《今から、1人で港の倉庫に来い》



「……は?」



何かの聞き間違いか?



俺は携帯電話を握りなおした。



《お前の大切な女は預かった》



大切な……女……?



ハッとして、俺は窓辺に近寄って千沙の部屋を見た。



窓には分厚いカーテンがひかれていて、中の様子がわからない。



あの、バカ!!



1人で出かけるなと、あれほど言ったのに!!



その時、受話器の向こうから千沙の声が聞こえてきた。



《大志、来ないで!! 来なくていい!! 大志、聞こえてる!? 絶対に、来なくていいから!!》



必死で、俺に向けて叫んでいる。



俺は、奥歯をギリッとかみしめた。



「10分以内に行く」



《あぁ。1人で、だぞ》



「わかってる」



それだけ言うと、俺は電話を切った。



今にも血管が切れそうなほどの怒りが、こみあげてくる。



絶対に来なくていい?



そんなの……行くにきまってるだろうが!



たとえ、自分の身になにが起こっても。




俺は絶対に千沙を助ける!!

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