第54話
ずっと一緒にいたあたしなら、それがわかる。
それなのに……。
「なんで……?」
あたしの声が上ずり、震えていた。
カナタは、答えない。
「なんであんたがここにいるのよ!!」
悔しくて、いつの間にか涙がにじんでいた。
大志が、カナタに騙されていた。
この状況は、誰がどう見たってそうだった。
「カナタ、あんた大志に助けられたんじゃなかったの!?」
怖いハズなのに悔しいさの方が勝ってしまって、徐々に声は大きくなっていく。
「裏切り者! ひきょう者! こんなやり方するなんて……!!」
「……ごめん」
え……?
今、『ごめん』って、言った……?
よく聞こえなくて、あたしはカナタを見る。
しかし、カナタはあたしから視線をそらし、携帯電話を取り出していた。
「もしもし、俺。カナタ」
ボソボソと話すカナタ。
一体、誰に電話しているんだろう?
さすがに、距離のあるこの場所からじゃ相手の声までは聞こえてこない。
でも……。
でも、もし相手が大志だったら?
大志を呼び出すために、あたしを捕まえたのだとしたら?
ううん……。
この状況、それしか考えられないじゃない。
そして、あたしは気が付いてしまったんだ。
カナタのポケットに入れられている、果物ナイフに……。
次の瞬間、あたしは叫んでいた。
「大志、来ないで!! 来なくていい!! 大志、聞こえてる!? 絶対に、来なくていいから!!」
電話の向こうの大志へ届くように、大きな声で……。
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