第52話

あたしが1人で出歩くとどうなるのか。



それがわかれば、大志の隠していることも自然と見えてくると思った。



少し……危険な行動なのかもしれなかったけれど。



このまま大志の手の内で踊らされているなんて、嫌だった。



あたしも、本当のことが知りたい。



その気持ちが、先走っていた。



「大丈夫。何かあっても、きっと大志が来てくれる」



そう自分にいいきかせ、あたしは家を出たのだった。


☆☆☆


家を出て賑わっている商店街へとゆっくり歩いていく。



空は青く、街も平凡そのもので、危険が潜んでいる様子なんてなかった。



「いつも通りだなぁ……」



警戒しながら歩いていたあたしだけれど、見慣れた街並みにホッとして胸をなで下ろしていた。



大志の気にしすぎだったんじゃないかな?



と、思っていた時、不意に後ろから誰かにぶつかられ、あたしは体のバランスを崩して前のめりに倒れ込んだ。



コンクリートに両手をつき、痛みで顔をゆがめる。



全く、誰がぶつかってきたのよ!?



そう思って振り向く間もなく、あたしの視界は布状のものによって塞がれてしまった。



「きゃ……」



悲鳴をあげる声も口を誰かの手によって塞がれ、途中でむなしく消えていく。



そのまま、軽々とあたしの体は抱え上げられ、柔らかなクッションの上に座らされた。



なにが起こっているのか、わからない。



ただただ、恐怖で身がすくむ。



バンッ!



と、車のドアを閉めるような音が聞こえて、あたしはハッと気がついた。



ここ、車の中!?



後ろから車が近づいてきていたなんて、ちっとも気がつかなかった。



せめて自分の口を自由にしようと思い、ブンブンと首をふって手をどかそうとしてみる。



しかし、それも無駄だった。



静かなエコカーは音もなく、あたしの乗せて走りだした……。

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