第51話
あたしには、到底理解できない世界だから。
もしかして、あたしがサヤさんを連れ出したのは、本当に迷惑なことだったのかもしれない。
そう思って落ち込んでいると、サヤさんがあたしの肩を軽くたたいた。
「でも、ありがとう。遊びでエッチするなんて、よくないよね」
「え……?」
「本当は、あたしもちゃんとわかってるよ。こんなことしちゃダメだって」
「サヤさん……」
「でも、寂しくてさ。つい、誰かれ構わず優しくしてくれる男に、ついて行っちゃうの。
結局それって自分の弱さだから、自分でなんとかしなきゃいけないんだけどね」
そう言って、寂しそうにほほ笑む。
その笑顔は影を持っていて、あたしは胸がキュッと痛んだ。
「会場から連れ出してくれてありがとね。これをキッカケに、あたし変わってみようかな」
「変わる……ですか?」
「うん。1人でも強くなってみようかな」
サヤさんはそう言い、今度はとびきり素敵な笑顔を見せたのだった。
☆☆☆
それから、前回と同じようにアツシがタクシーを呼び、それぞれの家に送ってもらったあたしたち。
「ありがとう、アツシ」
最後にタクシーを下りることになったあたしが、アツシにそう声をかける。
「あぁ。あ、千沙ちゃんは大志から伝言があるんだった」
「へ? なに?」
「くれぐれも、1人で出歩かないように。今日も、俺呼んでくれたらすぐ来るから。わかった?」
「えぇ~?」
あたしは、アツシの言葉に頬を膨らませる。
出かけるときに、いちいちアツシに連絡しなきゃいけないの?
それはさすがにめんどくさいなぁ。
っていうか、なんでそこまでしなきゃいけないの?
大志は集会に参加させてくれたし、集会の内容を聞く限りじゃ、そんなに危機が迫っているようには感じられない。
「千沙ちゃん、わかった?」
念を押してくるアツシに、あたしは「わかったわよ」と、仕方なくうなづいたのだった。
☆☆☆
翌日も休校日だったあたしは、ある決意をしていた。
いつもは薄いカーテンか引いていない窓に、分厚いカーテンを引く。
それは、大志の目から逃れるためのものだった。
「大志がいつまでも隠すなら、あたしだって黙ってないんだから」
そうつぶやき、バックを肩にかける。
ここ最近、大志はあたし1人で外出することをひどく嫌がっている。
だから、あえてそれを実行しようと考えたのだ。
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