第44話
そんな事言ってもらえるとは思っていなかったあたしは、嬉さのあまり、勢いに任せて大志に抱きついてしまった。
「ちょっ……千沙!!」
「あ、ごめん……!」
いつもだったら、抱きつくことにだってあまり抵抗はないんだけれど……。
今日のあたしはちょっと変なんだった。
慌てて身を離すけれど、きっと顔は真っ赤になっているに違いない。
大志も顔が真っ赤になっていて、思わずお互いに視線をそらしてしまった。
すると……。
そんな様子を見ていたアツシが、あたしから風邪薬を取り上げた。
「あ、それまだ飲んでないのに」
「たぶん、千沙ちゃんのは風邪じゃないよ?」
「え?」
あたしは、アツシの言葉に首をかしげる。
心臓はドキドキして、体は熱くて、大志が近くにいると視線をそらしちゃったりして。
今日はあたし、すごく変なのに……。
「自分で調子の悪い原因に気がつかないと、治らない病気かもね?」
アツシがそう言い、あたしはまた首をかしげる。
なにが言いたいのか、あたしには全然わからない。
体調不良の原因は、風邪でしょう?
チラリと恋羽の方を見ると、恋羽はこちらを見てニヤニヤ笑っている。
2人してニヤニヤして、気持ち悪いなぁ。
でも、大志から次の集会に参加していいって言ってくれたし、今はそれだで十分!
「大志、ありがとうね」
「いや……。千沙が元気ないと、なんか張り合いねぇしな」
「そっか。じゃぁ、集会までに風邪治すね!」
そう言って張り切るあたしに聞こえないように、アツシは
「この様子じゃ当分治らねぇな」
と、呟いたのだった。
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